管理者・指導者に聞く医師の働き方改革への取り組み
−東京産婦人科医会−

水主川 純

東京都管理者・指導者に聞く医師の働き方改革への取り組み
−東京産婦人科医会−

東京女子医科大学
水主川 純

はじめに
 医師の働き方改革の新制度は、令和6年4月から施行された。医師が健康に働き続けることのできる職場整備は、医師本人、患者・国民に対して提供される医療の質・安全の確保、持続可能な医療提供体制を維持していく上で重要である。本稿では、東京産婦人科医会による東京都産婦人科勤務医の職場環境に関する調査と医師の働き方改革への取り組みに関する現状について概説する。

東京産婦人科医会による東京都産婦人科勤務医の職場環境に関する調査について
 東京産婦人科医会では、日本産婦人科医会勤務医部会が全国で分娩を取り扱う施設(有床診療所を除く)に対して実施した「産婦人科勤務医の待遇改善と女性医師の就労環境に関するアンケート調査」(以下、アンケート)をもとに東京都のデータを分析し、検討・意見交換をおこなっている。

東京都に設置されている医学科は13大学(国立大学:2大学、私立大学:11大学)である。東京都の周産期医療対策事業1)では、8つの医療ブロックにより構成されており、令和7年4月1日現在、東京都の周産期母子医療センターは、28施設(総合:14施設、地域:14施設)である。また、東京都が周産期母子医療センターとの連携の下、ミドルリスクの妊産婦に対応する周産期連携病院と指定している施設は14施設である。

日本産婦人科医会が令和6年8月2日から9月20日に実施したアンケートでは、東京都のアンケート対象施設は97施設であり、67施設から回答があった。67施設中、3施設は分娩数が記載されていなかったため、これら3施設を除外した64施設についてデータ分析を行った。

1施設あたりの平均医師数は、常勤医師数12.4人、非常勤医師数3.7人であった。1施設あたりの平均分娩数は405.4件、平均帝王切開件数は131.7件、平均母体搬送受入数は49.8件であり、いずれも前年を下回った。

施設機能については、総合周産期母子医療センター(以下、総合群:12施設)、地域周産期母子医療センター(以下、地域群:10施設)、周産期母子センターの指定がない医療機関(以下、指定なし群:42施設)の3群に分類して検討した。1施設あたりの平均常勤医師数は総合群では26.9人、地域群では21.7人、指定なし群では7.7人であり、平均非常勤医師数は総合群では8.7人、地域群では5.4人、指定なし群では5.2人であり、前年と同等であった(図1)。

図1

1施設あたりの平均分娩数は総合群では947.0件、地域群では845.7件、指定なし群が429.2件であり、1施設あたりの平均帝王切開件数に関しては、総合群では356.2件、地域群では389.6件、指定なし群が94.4件であり、地域群が最多であった。また、平均母体搬送受入件数に関しては、総合群、地域群、指定なし群の順に件数が多かった(図2)。

図2

労働基準法に基づく原則的な年間時間外労働時間の上限が360時間であるのに対して、診療従事勤務医については時間外労働時間労働基準の上限に応じて水準が設定されている。この水準の取得状況については、A水準が37施設(総合群:6施設、地域群:4施設、指定なし群:27施設)であり、C-2水準を取得している施設はなかった。今回のアンケートでは追加的健康確保措置に関する設問が追加された。追加的健康確保措置とは、一般の労働者に適用される時間外労働の上限を超えて医師が働かざるを得ない場合、一般的な労働者に対する健康福祉確保措置に加えた措置である。連続勤務時間制限、勤務間インターバル、代償休息の項目に関する遵守率が100%であった施設の割合は、それぞれ46.3%、46.3%、28.4%であった。追加的健康確保措置の遵守については、今後、取り組むべき課題の一つであろう。

医師の働き方改革への取り組みでは、意識改革と理念の共有が重要である。労働時間の管理の観点では、勤務時間管理システムによる意識改革の推進が必要である。しかし、厳格化した勤務時間制限により若手医師の診療経験や指導を受ける機会、自己評価への影響も懸念されており、研修・教育体制の再構築が考慮される。

おわりに
 医師の働き方改革は労働環境や医療安全の観点では望ましい変化である。この改革は、個々のライフステージに応じたワーク・ライフ・バランスの実現するために推進されることが望まれている。ワーク・ライフ・バランスが働き方改革により向上することは、現役の産婦人科医師だけでなく、将来産婦人科医師を目指す者にとっても重要なことである。東京産婦人科医会では、引き続き、働き方改革に関する調査や情報提供に取り組んでいく。

文献
1)東京都医療保健局.周産期医療とは[インターネット]. 東京:東京都医療保健局;2025[参照2025年10月30日].Available from: https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/iryo/kyuukyuu/syusankiiryo/syusankiiryotoha

事例紹介