管理者・指導者に聞く医師の働き方改革への取り組み

佐藤 多代

宮城県管理者・指導者に聞く
医師の働き方改革への取り組み

仙台赤十字病院
佐藤 多代

本県では、2005年仙台市セミオープンシステム導入と2011年東日本大震災により、産科医療機関の集約化と医療圏毎のセミオープンシステム化が進み、二次三次周産期医療機関に勤務する医師数が増加しています。東北大入局者数が安定していることもあり、各施設に若手医師が複数名在籍し、活気にあふれています。

当院は総合周産期母子医療センター(本県では2施設指定)として、2020年度は分娩数743件(うち帝切309、28週未満早産16)、母体搬送124件、多胎70組を管理しました。医師数は12名(うち育休1、時短2、専攻医2)、男女比は男性3名、女性9名(うちママドクター7)、主戦力であるママドクターが限られた時間で最大限に力を発揮できるような勤務体制をとっています(スライド1)。

スライド1

しかし、午後から夕方にかけて人数が減り、当直可能な医師数は男性3名、女性5名(うちママドクター3)、居残り/呼び出し可能者はさらに減ります。以前は最大週3回の当直応援を依頼していましたが、昨今の若手医師の男女比から予想される通り、応援医師派遣元の東北大医局でもママドクター増(=当直可能者減)、関連病院への当直応援が困難となり、自院医師での当直体制構築が急務となりました。そこで、当科では2017年10月より変則交代制勤務を導入しました。ただし、大都市圏のセンター病院で導入されている完全変則交代制とは異なり、夜勤専従者を設けることで、より少人数で当直体制を組めるようにしています(スライド2)。

スライド2

これにより、医師側にも経営面でも様々なメリットがもたらされました(スライド3)が、夜勤専従者や指導医(オンコール待機)には必ずしもメリットとは言えず、自身の年齢も相まって心身の負担感が増してきました(スライド4)。

スライド3
スライド4

周産期医療機関の集約化と女性医師(特にママドクター)の増加により、当科でも日中のマンパワーは充足されたものの、夜間の診療体制をどう維持するかは今後もつきまとう課題です。変則交代制勤務(特に夜勤専従者の配置)は人員の少ない地方病院でも有効な手段ではありますが、将来にわたる最適解にはなりません。「誰かの犠牲のもとに成り立つ体制」では男女間格差・女性間格差はなくなりませんし、指導医世代(特に平成一桁卒の地方勤務医、いわゆるオーベンネーベン制度での激務を経験した最後の世代)の働き方への意識(つい自分が頑張る)も変えていかなければならない時でしょう(スライド5)。

スライド5

医師の働き方改革は、マンパワーがあってこそ。医学生のリクルートのみならず、現職者が個々のライフステージに合わせて働き続けられる(離職しない・させない・就職したくなる)職場環境づくりに、これからも努めていきたいと思います。

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