医師の働き方改革に向けて、青森県の産科医療の現状

丹藤 伴江

青森県医師の働き方改革に向けて、
青森県の産科医療の現状

青森県臨床産婦人科医会勤務医部会委員長
独立行政法人国立病院機構弘前病院産婦人科
丹藤 伴江

青森県は本州の最北端に位置しています。複雑な地勢、中央を分断するように横たわる八甲田山系、冬の気象が産婦人科医師の配置を考える上で大きなポイントとなります(スライド1)。

スライド1

医療圏域としては、津軽地域(弘前大学の所在地である弘前市が中心)、東青地域(県庁所在地の青森市が中心。県総合周産期センターに指定される県立中央病院を有する)、西北五地域(五所川原市を中心とし、広い地域を少ない産婦人科医がカバー)、三八上北地域(八戸市が中心。東北大学と岩手医科大学から派遣される医師が多く勤務)、下北地域(むつ市が中心。人員は少ない。地理的に高次施設への搬送も時に困難)に分けられます。くわえて弘前大学は秋田県北地域(大館市立病院。周辺地域には開業クリニックも常勤医のいる公立医療機関もなし。秋田大学から1名派遣)にも医師派遣をしております(スライド2)。

スライド2

すでに集約化はかなり進んでいます。県周産期システムが構築されており少ない産婦人科医と小児科医で産科医療の質を保つ方策がとられています。

時間外勤務とみなされる年間の総時間を一人当たりの時間外勤務可能時間で除し、かつ、MFICUを有する施設は2名の当直体制で計算してみます。A水準が適応されますと、病院の機能を優先して選択した場合、県内には5つ(くわえて大館市立病院)の医療機関にしか人員は配置できません(スライド3)。

スライド3

必要な人数を数合わせしているだけですので、実際には経営母体が異なる医療機関の統合は簡単ではありませんし、産科医療の撤退は自治体の反対も当然予想され、2024年にこの形になることは現実的ではありません。B水準が適応されますと現状に近い状態で人員配置は可能と計算できます(スライド4)。

スライド4

しかしこれも、すべての医師が健康で平均的に当直を行うという仮定の下で成り立っております。弘前大学産婦人科教室で女性医師が占める割合は6割、40歳以下の年代では8割で(スライド5)、産休・育休を確保するとなるとB水準であっても厳しいことがわかります。

スライド5

日々の診療に加え、サブスペシャリティ認定のための研鑚や学会発表、講演会、医学部学生や看護学生の講義、検診…と多岐にわたる業務をしつつ、各人の健康やQOLを維持するための働き方改革をいかに両立させるか、非常に難しいことと感じております。
(提示したスライドは弘前大学医学部産科婦人科学教室横山良仁教授の資料を一部改変して使用しました)

事例紹介