富山県の周産期医療体制と当科における働き方改革の取り組み

飴谷 由佳

富山県富山県の周産期医療体制と当科における働き方改革の取り組み

富山県立中央病院産婦人科
飴谷 由佳

働き方改革について、県立病院の立場からご紹介します。富山県はコンパクトな形で、搬送所要時間は県のほぼ中心にある富山県立中央病院まで救急車で1時間以内、県立中央病院屋上ヘリポートに常駐しているドクターヘリで10分以内と恵まれた地理条件です。富山県周産期医療体制は、4つの医療圏それぞれに地域周産期母子医療センターがあり、県立中央病院に総合周産期母子医療センターがあります。県内の分娩取り扱い医療機関は18あり、2022年の出生数は6,022人と減少傾向です。ここ数年で県内の総合病院での分娩取り扱い中止が続き富山医療圏では3つが中止しました(図1)。

図1

図2は2022年の医療圏ごと分娩数です。分娩の48%は1次医療機関で行われています。県西部の高岡、砺波医療圏では1次医療機関の分娩数が多くなっており、そのほとんどが1〜2人の常勤医師と複数の非常勤医師で担っています。ベテラン医師が分娩をやめたり大学病院からの派遣医師が減ると、富山県の周産期医療体制は厳しくなると予想されます。

図2

宿日直許可は、1次医療機関9施設のうち5つで許可があります。派遣医師なしの施設では許可申請をされていません。2次3次は9施設のうち7つで許可あり、常勤医師5人以下の施設5つでオンコール制です。
働き方改革にむけて始めた取り組みについて、県内分娩取り扱い医療機関にアンケートを行いました。ご協力いただいた先生方に感謝申し上げます。回答をまとめると、休暇取得を積極的に行うこと、医師確保の努力をすること、業務量を見直すこと、適切な報酬を得ることがあげられていました。また行政・学会への希望・意見についても伺いました。産婦人科医師を増やしてほしい、という意見が複数あり、また働き方の多様性についての意見もありました。
富山県立中央病院産婦人科は医師が14人います(うち当直要員13)。分娩は年間800、母体搬送70、体外受精150、手術件数900(うち腹腔鏡手術400)です。ERとMFICU2人当直体制で、金沢大学から週に1回の応援をいただいています。麻酔科医と小児科医(一般小児科とNICUの2人当直体制)が常駐しています。
日中業務は外来診療、分娩、ER対応、手術、不妊治療など多岐にわたります。ER対応は24時間体制で、母体搬送のほか婦人科救急の受け入れ、性被害者対応などもしています。手術は午前より2〜3列並列で行うことが多く一時的に4列並行ということもあります。夜間体制は毎日若手医師と指導医の2人で当直します。富山医療圏では3つの総合病院で救急患者受け入れの輪番体制をとっていますが、当院では産科救急については非輪番日も原則断らずに受け入れをしています。

図3は働き方改革にむけた当科の取り組みです。チーム制です。時間外は2人の当直医にファーストコールします。分娩は日中夜間ともに原則当番制です。カンファレンスや抄読会は時間内に行うよう努力し、病状説明も患者さんご家族の協力をえて時間内に行うようにしています。クラークが病棟・外来に配置されており業務委託をすすめています。

図3

さらなる取り組みとして、外来業務では逆紹介させていただくこと、コロナ期間に中止していた院内助産の再開、手術患者さんの入れ替え時間の短縮、救急輪番日の翌日は外来業務や手術業務との兼ね合いがあるが可能な範囲で帰宅するようにしています。当院では不妊治療にも力をいれています。とくに体外受精は作業が週末や時間外に及ぶことがありますが現在はすべての業務を医師が行っています。培養液の選択や凍結スケジュールの調整、胚培養士の採用努力などしています。
今後については若手医師ベテラン医師ともに魅力ある職場を目指し多分野の仕事、新しいことに挑戦していきたいと思っています。また働き方の多様性に配慮していきたいと思います。一方で県立病院としての宿命があり、すべての医師が満足できる働き方というのはとても難しく、バランスが大切だと考えます。

事例紹介