管理者・指導者に聞く医師の働き方改革への取り組み「当院・当科の働き方改革と当県における宿日直許可の現況」

中村 康彦

山口県管理者・指導者に聞く
医師の働き方改革への取り組み
「当院・当科の働き方改革と
当県における宿日直許可の現況」

山口県立総合医療センター
統括副院長、産婦人科
中村 康彦

当院では、平成22年度から医療従事者役割分担推進委員会を立ち上げ、職員の負担軽減に向けた取り組みを進めてきた。その中でも、最も上手くいったと自負する医師への負担軽減が医師事務作業補助者(医療クラーク)の導入である。10名の採用でスタートした医療クラークは現在40名にまで増え、ほぼ全ての外来診察室に配置されている。産婦人科外来では、婦人科、産科、生殖医療科に各1名の医療クラークが配属され、医師の隣で図1にある仕事を電子カルテで行っている。各種オーダーで重要なもの(処方など)は、その場でダブルチェックしている。紹介状などの各種書類、退院サマリーなども下書きしてくれるが、診療科によって任せる範囲には差がある。新規採用者は、教育係(上司や医師)の指導(OJT)の後、現場へ配置される仕組みが出来上がっていることがキーポイントである。

図1 当院での主な業務内容

2024年度からの医師の働き方改革に対応するため令和2年度に立ち上げたのが、勤務医負担軽減作業部会である。これは上記の医療従事者役割分担推進委員会で課題の残っていた項目で、医師に特化したものを対象に改善・実施することを目的とした。これらはまさに今回の働き方改革で求められる課題である(表1)。さらにタスクシフトについては、令和3年度にタスクシフト推進ワーキングを立ち上げた。その成果が表2であるが、継続すべき問題点も残っている。また、医師不足で負担の多い部門には特定看護師の養成も進めている。

表1 当院の働き方改革に関する対応
表2 院内タスクシフト検討会の成果

さて当院産科は、母子病棟18床、MFICU6床、院内助産院6床を抱える総合周産期母子医療センターで、年間600〜650件の分娩(帝切率:25〜30%、母体搬送:40〜50件)を有し、男性4名(60歳代:2名)と女性5名(未就学児あり:2名)の医師で、1名の当直と1名の自宅待機で時間外の対応をしている。複数主治医制で、時間外対応は原則としてその日の当直医と待機医が対応する。2019年の時間外労働は、最長は専攻医の1,032時間で、それ以外は960時間以内に収まっていた。ちなみに当院は宿日直許可を得ている病院である。時間外分娩件数は0or1件/日が多い状況のため、宿日直を継続許可されるものと考えている。また、NICU当直は大学からの派遣医師に負うところ大であり、宿日直許可は周産期医療の継続に不可欠である。

最後に、山口県内の分娩取り扱い施設に、兼業実態、宿日直申請状況について行ったアンケート調査の結果を示す(表3)。令和4年7月時点で山口県内には分娩取り扱い施設が28あり、兼業を頼んでいる施設は15施設で、うち月1回以上の兼業依頼病院8施設では2施設(25%)のみが宿日直許可を取得していた。但し、宿日直許可がないと兼業医師派遣を断られる可能性については6割以上の施設が認識しており、多くは今後宿日直許可を申請する予定と答えていた。

表3 県内分娩取り扱い 28施設アンケート調査施工

現在、当院も2024年度に向けた改革を進めつつ、医療機関勤務環境評価センターへの書類を作成しているところである。

事例紹介