総合周産期母子医療センターでの取り組み

小川 正樹

千葉県総合周産期母子医療センターでの取り組み

東京女子医科大学八千代医療センター
小川 正樹

千葉県の総合周産期母子医療センターでの医師の働き方改革への取り組みについてご紹介致します。

初めに、当院の取り巻く状況についてご説明いたします。千葉県には年間5万件ほどの分娩がありますが、そのほとんどは、千葉市、松戸・船橋などの県北部に集中しております。この中に3施設の総合周産期センターを抱えております。また大学病院は、本学附属病院をかかえるのが千葉大学と国際医療福祉大学となります。その他、分院として複数の大学病院がありますが、そのいずれもが県北部に位置している状況です。総合周産期母子医療センターは、千葉大学と県南部に位置する亀田医療センターおよび当院の3施設となります。そのほか各市に1施設程度の地域周産期母子医療センターを抱えている状況となります。

当院は、現在開院して20年弱を迎える状態で、病床数は約500床となります。基本12診療科、全部で30弱の診療科を抱える総合病院となっております。年間500件程度の分娩を扱っております。

産婦人科の診療体制は、教授1名、准教授1名、助教授1名、専攻医5名の8名程度で、助教授および専攻医のうち6名は女性医師となります。2階建ての専門医とし、周産期専門医(母体胎児)資格を有している2名が役付きとなり、他のサブスペシャリティ専門医はおりません。したがって、主に産科診療を担っている現状です。しかし、研修指導施設でもありますので、基本の婦人科診療も併せて実施している状況です。

産婦人科の病床数は産科一般病床が40床、MFICU病床が6床となります。婦人科病床の定床はなく、混合病棟を使用している状況です。NICUは24床、GCUは10床となります。

私は、ここに2021年2月から勤務しており、4年が経過している状況です。当直は2列で実施しておりますので、その2列ともにシフト勤務(夜間を当直ではなく勤務時間とみなす)として運用されておりますので、現在の働き方改革制度では、オーバーワークとなることは避けられない状況といえます。

当大学は、ご承知のように元理事長体制の下、数年来、医師・看護師の大量退職が相次ぎました。これに伴い八千代医療センターも同様で、2022〜2024年までに診療科の閉鎖もともなう医師・看護師の大量退職がございました。産婦人科にも影響はございまして2024年度には、助産師の大量退職にともない、7対1看護基準を維持することができなくなり、実稼働病床数を半減させて運用しました。その結果、産科一般病床20床、MFICU3床での実稼働となっております。これは産科診療を縮小せざるを得ない状況でありました。

以上のような環境下で医師の働き方改革に関して以下のような取り組みを進めてまいりましたので、ご紹介いたします(図)。

上記でご説明いたしましたようにシフト勤務の継続は不可能であるとの見込みでありましたので、宿日直体制をとるべく労働基準監督署へ1列の宿直体制の許可を得ることができました。現在では、1列のシフト勤務と1列の宿直体制で勤務している状況となります。このためB水準および連携B水準で実施することが可能となりました。さらに、変形シフト勤務も取り入れました。通常であれば9時から17時までの勤務のところを、17時から翌日9時までの勤務体制を柔軟に取り入れ、勤務間インターバルの確保に努めました。

次に、夜間の産科診療体制でMFICU加算を算定するために、常時MFICU内に医師が常駐することが求められておりました。このような状況を確保するために、夜間の産婦人科救急のうち、婦人科疾患の新患の受け入れを制限しました。すなわち、卵巣腫瘍茎捻転、卵巣出血、異所性妊娠などの疾患では、緊急手術が必要となる場合が多く、MFICU内に常駐する産科医を確保することが困難となることが予想されたためです。

さらに、産科病棟診療体制を確保するために、平日日勤帯の外来診療体制を圧縮することを行いました。具体的には、産科外来の効率化を目的として、産科外来診療日を8コマ/週で4日間/週で開いていた産科外来を6コマ/週で3日間/週とし、産科外来開催日を圧縮しました。その分、病棟体制に人員を充てることができました。しかし、それだけでは圧縮された曜日の患者数が増加してしまうため、外来の医師の負担を軽減させるために、事務補助員を確保しました。これは、メディカルクラークとして、電子カルテへの入力などの面でサポートしてもらうことが可能となり、外来診療を行う医師の業務軽減に繋がり、時間当たりの患者数を増やすことが可能となりました。

最後に、医師の業務量軽減を目的として、メディカルクラークを用いてのタスクシフトを実施しました。具体的には、㈰レセプト入力の補助、㈪医療書類(診断書・証明書)の記載補助、㈫退院サマリーの入力補助、などの項目でタスクシフトを図りました。

まとめとなりますが、医師の働き方改革の当院での対応について、これまでの取り組みを紹介いたしましたが、いずれの取り組みも根本的な解決にはなっておりません。現場で行う対策には限界があります。産科医の確保、適正配置、産科医の給与見直し、など個別の病院のみで対応が不可能な部分について、国や都道府県・市町村含めた行政からの積極的な対応が求められるものと思います。

事例紹介