追加的健康確保措置とは

一般の労働者に適用される時間外労働の上限を超えて医師が働かざるを得ない場合、一般的な労働者に対する健康福祉確保措置に加えた措置=追加的健康確保措置を講じる必要があります。
具体的には、追加的健康確保措置①(連続勤務時間制限・勤務間インターバルなど)と追加的健康確保措置②(医師による面接指導、結果を踏まえた就業上の措置等)として分類されています。
A水準では、①の努力義務と②の義務、B・C水準では①と②双方の義務が課されます。

追加的健康確保措置①(A水準では努力義務、B・C水準では義務)

  • ①-1 連続勤務時間制限
    連続勤務は、宿日直許可を受けている当直明けの場合を除き、前日の勤務開始から28時間が上限となります。初期臨床研修医については、9時間以上の勤務間インターバルの確保と、15時間の連続勤務時間制限を原則とします。研修における必要性から、指導医の勤務に合わせた連続勤務が必要な場合、24 時間以下の連続勤務が認められますが、その場合の勤務間インターバルは 24 時間以上確保することとされます。
  • ①-2 勤務間インターバル
    通常の日勤(当直及び当直明けの日を除く)
    次の勤務までに 9 時間以上のインターバルを確保する。
    当直明けの日(宿日直許可がない場合)
    28 時間までの連続勤務時間制限を導入した上で、次の勤務までに 18時間以上のインターバルを確保する。
    当直明けの日(宿日直許可がある場合)
    通常の日勤を可能とし、その後の次の勤務までに9時間以上のインターバルを確保する。
  • ①-3 代償休息
    連続勤務時間制限・勤務間インターバル確保を実施することが原則であるが、日々の患者ニーズのうち、長時間の手術や急患の対応等やむを得ない事情によって例外的に実施できなかった場合に、 代わりに休息を取ることで疲労回復を図る措置です。代償休息の付与方法としては、対象となった時間数について、所定労働時間中における時間休の付与、勤務間インターバル幅の延長のいずれかによることとなり、代償休息の付与期限としては、代償休息を生じさせる勤務が発生した日の属する月の翌月末までとなります。

追加的健康確保措置②(全ての施設で義務)

  • ②-1 面接指導
    面接指導は、長時間労働の医師一人ひとりの健康状態を確認し、必要に応じて就業上の措置を講じることを目的として行います。ひと月あたりの時間外・休日労働について100時間未満という上限規制を例外的に緩和するための要件であることから、時間外・休日労働が「月 100 時間未満」の水準を超える前に、管理者は睡眠及び疲労の状況を確認し、一定以上の疲労の蓄積が確認された者については月 100時間以上となる前に面接指導を行うことを義務付けられています。なお、毎月あらかじめ決めておいた時期(時間外・休日労働時間が 100 時間以上となる前)に面接指導を行うことも可能です。
  • ②-2 就業上の措置
    面接指導実施医師は、面接指導の結果により本人への指導区分(0.措置不要、1.要保健指導、2.現病 治療継続又は医療機関紹介)ならびに就業区分(0.通常勤務、1.就業制限・配慮、2.要休業)を判定し、報告書ならびに意見書を作成の上、管理者に報告します。
    管理者はそれに応じて医師の健康確保のために必要な就業上の措置を最優先で講じることが求められます。

その他

(B)(C)水準の時間外労働の上限である年 1,860 時間の月平均時間数(155 時間)を超えた際には、時間外労働の制限等、上記の就業上の措置と同様に労働時間を短縮するための具体的取組を講じる必要があります。

これらの措置は一見して医師の勤務を縛る規制に見えますが、医師が心身ともに健康な状態で患者診療にあたるためには不可欠なものです。医師の働き方改革の推進に関する検討会「長時間労働の医師への健康確保措置に関するマニュアル」では、労働者自身の自己診断や面接時のチェックリストなども掲載されています。また各都道府県の産業保険総合支援センター(https://www.johas.go.jp/shisetsu/tabid/578/default.aspx)では、産業保険についての相談窓口が設置されており事業主や産業保険関係者からの相談を受け付けています。労働時間の見直しとともに医師の健康を守ることができる体制づくりを進めましょう。

参考:医師の働き方改革の推進に関する検討会「長時間労働の医師への健康確保措置に関するマニュアル」
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000677260.pdf