当科における働き方改革への取組み、および、沖縄県内の主たる分娩施設の現状

長井 裕

沖縄県当科における働き方改革への取組み、
および、沖縄県内の主たる分娩施設の現状

沖縄県立南部医療センター・こども医療センター産婦人科
長井 裕

働き方改革(以下、改革)における当科の取組みと沖縄県の主たる分娩施設の現状を報告します。
まず、当科における変形時間労働制(以下、変形労働制)について述べます。当科では2018年度に診療科内、事務(院内、県庁)で変形労働制採用に向けた議論・調整を重ね、2019年4月から変形労働制を採用しました。議論・調整の主な内容は、1)前夜に翌日の日勤業務を行うため夜勤・申し送り終了後は速やかに帰宅可能、2)休日日勤を行った場合は平日に代休を取得する、3)前述1)、2)により時間外勤務時間が減るため手当減となる、でした。また、科内では事情により平日夜勤、土日・祝祭日勤務が難しい医師とその勤務を補完する医師の間で生じうる心情的事態についても丁寧に話し合いをしてきました。キーワードは「事情があっても勤務が続けられる職場を目指す」、「お互い様」と「感謝」でした。変形労働制により仕事のON/OFFがより明確になりましたが、過去5年は、産休・育休・病休は常にありうることと経験し、その環境においては上述のキーワードの重要性を実感してきました。ハイリスク症例のハイボリュームセンターにおいては変形労働制や精神論だけでは休職者や退職者への補完対応には限界があり、根本的解決にはマンパワー充実が必須であり、単施設という枠を超えた全県的包括的体制構築は不可避と考えます。
次に県内分娩施設の現状について述べます。改革前後の状況把握のため主な県内15施設(総合周産期センター2、地域周産期センター6、その他総合病院5、個人病院2)にアンケートを行いました(回答率100%)。アンケート項目を図1に示しました。以下、アンケート結果を述べます(紙面都合で割愛あり)。

図1 沖縄県の主な分娩施設におけるアンケート調査 項目

図2に変形労働制施行状況を示しました。個人病院を除く施設では施行率が増加していました。宿日直許可申請率は、総合周産期センター0%(0/2)、地域周産期センター16.7%(1/6)、総合病院60%(3/5)、個人病院100%(2/2)でした。ハイリスク妊婦対応が少ない施設ほど宿日直許可の申請率が高くなる傾向にありました。改革前後で他施設から夜間、休日に応援派遣される回数は、全施設で増減なしでした。

図2 2024年4月前後の変形時間労働制採用の有無

図3、図4に改革で良くなった点、悪くなった点・問題点を示しました。超勤時間の変化は、1施設が常勤医師4名減(産休、育休、病休)のため時間外勤務時間が増えていました。11施設に明らかな変化はなく、3施設は減少(若干含む)でした。
その他の集計結果概要(図と重複含)は、1)個人病院以外では36協定実質上限時間は1,860時間、2)施設の事情で不都合な事態も生じた。3)超勤時間短縮にはマンパワーが必要、との意見が見られました。以上です。

図3 働き方改革により良くなった点
図4 働き方改革により悪くなった点・問題点

事例紹介