県内周産期母子医療センターの現状と課題

穴見 愛

大分県県内周産期母子医療センターの現状と課題

別府医療センター産婦人科
穴見 愛

大分県には4つの周産期母子医療センター(総合1、地域3)があります。医療圏を大きく分けると、県北を①中津市民病院(地域)と②別府医療センター(地域)で、県南を③大分県立病院(総合、MFICU6床)、④大分大学附属病院(地域)で担当となりますが、在胎週数やその病院のもつ診療科の状況により適宜、紹介、母体搬送での対応となります(図1)。

図1

それぞれの施設の勤務状況と宿直料、宅直料について、また経腟分娩1件に対する時間外勤務と分娩手当について、図2に示します。施設①、②は宅直(オンコール)体制であり、宅直料は1,200円/5,000円であり、診療で呼ばれた場合に実労働時間で申請となっています。施設③、④は当直体制で、宿直料20,000円でした。分娩手当は分娩1件あたり5,000円から30,000円となっています。

図2

「働き方改革」というとQOLの改善として勤務時間に論点が置かれがちですが、私たち勤務医の満足度を考えた場合、果たしてそれだけでしょうか。このようなレーダーチャートを考えました(図3)。満足度として、もちろん適切な勤務時間も考慮されるべきですが、どれだけの症例を経験できるか(症例数、経験数)、また専門医、さらにサブスペシャリティーを取得可能な修練施設かどうか、勤務状況に見合った給与体制かどうか、周産期、周術期の管理に必要な科が揃っているか、コメディカルや医師事務などの数や配置などといった職場環境や、職場の人間関係なども必要な要素ではないかと考えます。これら要素の優先順位や重要度は学年や立場で変わるものです。このような要素にも配慮しつつ、さらに管理者や指導医は地域医療、高度医療、教育、研究に歪みが生じないようにバランスをとるという非常に難しい課題にも取り組んでいかなければいけないのが現状です。

図3

現状を踏まえた課題としては、取りかかりやすい勤務時間からまずは見直すことになるのだと思います(図4)。ただ、働き方改革の目的=労働時間の縮減ではないという認識をもつことが重要だと実感しています。労働時間の見せ方の調整をしていくことではなく、時間外業務と自己研鑽の明確化などが必要となります。効率的な診療体制には医師のWell-beingが欠かせません。働き方改革によりこの医師のWell-beingが守られることが目指すところだと考えますが、現状では残念ながら指導者、管理者のWell-beingがなおざりにされている印象です。現在も解決すべき点は多々ありますが、現在のこの取組みが心身ともにプラスになるようにバランスのとれるより良い環境へ向かっていることを願って、今後も課題に向き合っていくしかないと考えています。

図4

事例紹介