平成16年度 事業計画  
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H17 H16 H15 H14 社団法人日本産婦人科医会
H13 H12 H11 平成17年3月
 

青色は新規事業〕

1. 総務部
 A. 庶務
 B. 対外広報    ・渉外
 C. 法制・倫理
2. 経理部
3. 学術研修部
4. 医療安全・   紛争対策部
5. 医療対策部
 A. 医療対策
 B. コ・メディカル対策
6. 勤務医部
7. 社会保険部
8. 広報部
9. 女性保健部
10. 母子保健部
11. 先天異常部
12. がん対策部
13. 情報システム部
14. 献金担当連絡室
[4]医療安全・紛争対策部

 産婦人科、特に産科医療の進歩はめざましく、母体死亡率、周産期死亡率の顕著な減少は医療事故が減少してきた確固たる証拠である。にもかかわらず、数年来、産科医療事故報道は絶えることがない。他診療科の医療と異なり産科のリスクは高く、諸外国の周産期医療の成績からも、必然的に起こる医療事故も多いと考えられる。米国に見られるように、高額の損害賠償や医師免許取消など行き過ぎた懲罰主義は、萎縮診療となり、産婦人科医師のなり手を失い、医療の崩壊を招き、医療者のみならず国民にとっても決して望ましいものではない。
 しかしながら、医療事故・過誤を多発する医師・施設が存在することも事実であり、本会にも強く自浄作用が求められている。結局、国民が最も望むことはどこの産婦人科施設でも安全な医療を受けられるということであろう。
 一方、医療事故多発医師は医療過誤を多発しているのかという疑問がある。産婦人科専門の医師が検証する必要がある。示談、和解、民事訴訟においては患者側の予期せぬ損失に対して補償されることがしばしば見られる。産科医療においては1件の損害賠償額の高騰と、医療事故の多発により、医賠責保険の支払いを圧迫している。
 このような状況から、本会としては医療事故防止に向けて産婦人科医療事故報告制度を開始し、医療事故の実態を把握し、事故防止対策を練り、さらに医療技術・倫理面で問題のある医師を研修により再教育することとした。
 この報告制度を成功させ、医療事故・過誤多発医師の撲滅こそ、社会の信頼を勝ち得る唯一の方法と考え、本年度も本事業を強力に推進させることとする。

1.医療安全対策

(1)「第14回全国支部医療安全・紛争対策担当者連絡会」の開催
従来、医療事故や医事紛争について、情報の伝達、防止対策や対応処置のシステム作りの協議の場として、全国支部の担当者らとの連絡会を2年ごとに開催することとしている。
ただし、昨年度から開始した「報告制度」が定着するまでは毎年開催とする。
(2)「医療事故・過誤防止事業」の推進
昨年4月から開始した本事業の推進を図り、報告から医療事故防止のための提案、指導を行っていく。
(3)「医療事故・過誤防止事業」の名称変更と制度整備の検討、それらに伴う「モデル集」の改訂版作成・配布
1)名称変更の検討
2)年間施設報告の検討
3)その他、事業の整備
4)「モデル集」改訂版作成・配布
(4)「医療事故・過誤防止事業」への支部支援
本事業推進のため、支部に対し資金援助を行う。
また、本部主催の全会員を対象とした「産婦人科医療事故・紛争防止のための連絡・講習会」の開催を検討する。なお、参加費は自己負担とする(開催費費用見積:会場費、講師謝礼、等)。
(5)支部研修会(個別・集団研修)への支援
要請があり次第、講師等(委員・役員)を派遣できる体制を整え、各支部における医療事故・過誤対策のための研修会を支援する。
(6)母体死亡原因調査への協力
本年度、本会母子保健部が計画している母体死亡原因調査に協力する。
(7)医療事故防止のための研修資料作成
すべての医療機関は、医療の安全確保のために年2回の院内研修会が義務付けられている。本研修会を支援するために、院内研修資料を作成し全会員に送付する。
(8)小冊子「これからの産婦人科医療事故防止のために」の作成
医療事故の予防を主眼とした資料として、速報性と簡便性も加味して具体的な問題を取り上げた小冊子を平成9年度より発行(現在No.16まで)の小冊子を、本年度も必要に応じて作成する。
(9)「羊水塞栓症の血清検査事業」の継続と検査データの活用
2年前から浜松医科大学と本会とが協力・協調して実施している「羊水塞栓症の血清検査事業」を継続する。
(10)継続(検討)事業
対外的な働きかけ(厚生労働省や日本医師会など関連団体への連携等)と、会員への情報伝達(医会報等)を主眼に、学会等との連携・協議を図り、医療安全対策の遺漏なきを期する。
1)安全で、安心な産婦人科医療の検討
2)「陣痛促進剤ガイドライン」の作成
3)汎用されている「能書外使用」薬剤に関する検討
4)異状死に関する見解の検討 他

2.医事紛争対策

(1)医事紛争事例の対応
支部・会員等より要請のあった事例については、解決への障害となっている事項や対策について、当事者、担当者、場合により法律家も交えての医学的、法律的な見地からの専門的な検討を通じて助言、支援を図る。
また、日本医師会担当者や法律関係者、並びに日産婦学会「鑑定人推薦委員会」との密接な情報交換のもと、医学的・社会的な動向をも踏まえたup-to-dateな情報の収集に努める。
(2)鑑定人推薦依頼に対する対応
1)日産婦学会との連携・協調
 最高裁「医事関係訴訟委員会」からの付託を受けて、裁判所からの鑑定人推薦依頼には日産婦学会「鑑定人推薦委員会」が「鑑定人候補者リスト」をもとに対応している。同推薦委員会は学会、医会の両会からの委員により構成されており、本年度も引き続き協力する。
また、会員や支部からの鑑定人推薦依頼は従来のように本会で対応する。
2)「鑑定人候補者リスト」の整備
 会員、各支部の協力を得て、内部資料(部外秘)「鑑定人候補者リスト」の整備を学会と協調して行う。
(3)無過失補償制度の検討
医療事故における被害者救済制度は整備されていないため、その補償を求める民事訴訟が多発している。適切な医療行為を行っても不幸な結果となることを避けられないこともあり、患者救済のため、さらに不要な訴訟を避けるためにも無過失補償制度への期待は大きい。昨年度より、当部においても、また厚労省、日本医師会においても本制度に関して検討されている。本年度も実施に向けて協力関係を築き、情報収集・検討を行う。
(4)結審事例の検討
産婦人科関連の判例への検討、分析には、最新データの集積が肝要なため、平成7年度導入の判例体系CD-ROM(第一法規出版編)の更新(平成17年度版)を継続する。
また、判例関連の情報誌も併せて購読し、会員等からの要望のある判例情報の提供に活用する。
(5)医会報「医事紛争シリーズ」への対応・活用
1)掲載記事への対応
 医療安全・紛争対策委員会委員・顧問各位と広報部の全面的な協力を得て、掲載記事の作成を図る。
2)掲載記事の活用
 掲載記事は“医事紛争シリーズ集”として収録冊子(平成6年11月版、平成 10年11月版、平成16年3月版/掲載開始の昭和54年5月から平成15年11月までの288記事を収載)にしている。
本年度は、前年度作成の“医事紛争シリーズ集”(平成16年3月版:60記事を収載)を医療安全・紛争対策上の資料としての活用策を模索する。
(6)産婦人科関連医薬品使用上の注意に関するパンフレット作成
平成8年度発刊の「産婦人科関連医薬品使用上の注意に関するパンフレット」は、1薬剤1部(4頁以内)の追録形式で作成し、追録のバインダーも含めて全会員に配布後、新入会員にも残部に限り随時無料配布している。
新たなる収載薬剤や改訂を要する薬剤について、適宜注意を払いつつ、本年度も必要に応じて追録を作成し、対応する。

3.委員会

以上の事業を円滑に遂行するため、医療安全・紛争対策委員会を存置する。