3.災害時の乳幼児への心身の影響

 乳幼児については,前述の「妊産婦調査」の報告書 4)によると,出生児の在胎週数,出生体重,出生身長は,いずれも一般と有意差がなく,災害によって早産率や出生時における新生児の体格には影響を認めなかった.とはいえ,こういった思いもかけぬ非常事態に遭遇した時,特に避難所など,授乳や子育ての環境が劣悪なところでは,なによりも産科小児科の救護体制や生活面でのサポートが重要となるだろう.また,一般的に乳幼児の身体的な特徴として,免疫力が未熟なために風邪にかかりやすい,脱水症状になりやすい,肌が弱いためにおむつかぶれになりやすいといったことがあり,肺炎や喘息様の症状が出ることもあるので注意が必要である.

 乳幼児は不安や恐怖を言葉で上手く表現できないため,精神的な反応が生理面で表れる傾向がある.また,年長の幼児では災害から強い心理的ストレスを受けて精神的変調を来すことがある.ストレスから退避しようとして子どもがいわゆる「赤ちゃんがえり」をみせることは珍しくない.「ぐずぐず言う」「あやしても笑わない」「チックのような症状」などが認められることもある.親にとって無視できない負担となるが,こういった心理面の変調は決して珍しいものではなく,正常な反応と受け止めていく必要がある.ほとんどは一過性であり,時間とともに回復していくことが多い.