(3)高次施設への搬送のタイミングと注意点

(図5)

 この対応指針は全分娩施設を対象として作成した.SI:1以上となったフローチャートの上半分は一次施設でも対応してもよい.しかし,SI:1.5以上は高次周産期施設での管理が必要となる.したがって,一次施設ではSI:1以上となった場合,連携施設との早い段階で連絡・相談し,子宮収縮不良やさらさらとした出血に留意し,急速に進行する産科危機的出血となる前に診断し,早期搬送に心がけなければならない.ローリスク妊娠であっても分娩開始時より血管確保を行うことが望ましいが,異常出現時には速やかに18G以上の複数のルートを確保し急速輸液を開始することができるような準備をしておくことが重要である.
 SI:1以上となった場合には,子宮双手圧迫し,子宮収縮薬,人工膠質液,トラネキサム酸,酸素を投与する.血圧,心拍数,呼吸数などのバイタルサインをチェックし,経皮的酸素飽和度(SpO2)・出血量・尿量をモニタリングする.ヘモグロビン・血小板だけではなく,フィブリノゲンを含めた凝固系検査の採血をしておく.搬送が決定した場合でも,手技の容易な子宮腔内バルーンタンポナーデを挿入しておくことは弛緩出血に有用である.