(2)生産年齢人口減少と高齢化が進む日本の危機

 国が何も改善策を取らず,前記のように生産年齢人口の減少が進めば,社会保障費を負担する生産年齢人口の割合が65歳以上の高齢者人口の割合より少なくなる2065年頃には,国の維持はできなくなると考えられる.国の破綻が起こる前に,社会の安定のために必要な生産年齢の若い力が警察官,自衛官,消防などの仕事に優先的に就くとなれば,一般企業は若い力を雇用することはできなくなる.事実,若者の増加が期待できない証拠として,団塊の世代が60歳から65歳になった2010年では,団塊ジュニア世代は35歳から39歳になり,例年より出産数は増えることが期待されたが,人口の増加は起こらなかった(図2).


 団塊ジュニア世代の3分の1は結婚していないし,結婚したとしても子どもは1人にすぎない.これでは,ジュニアジュニア世代が生まれてこないために,人口の次のピークは起こらず,生産年齢人口の減少が続いている.このままの人口の推移で社会が進めば,いずれGDPは減少し税収が減ることになる.さらに消費者も減り,国内に商品を売る相手もいなくなり,住宅需要も縮小する.現在の安倍政権は,このような少子化と高齢化の予測に対して,「成長なくして分配はない」とのスローガンを掲げ,経済を発展させて,GDP600兆円の達成を目指している.今日までは,アベノミクスにより女性と高齢者の雇用を勧め,労働力人口の増加,企業のICT化とAI化の推進の結果,税収の増加に成功することで,小康を得ている.しかし,少子化の改善,日本人による生産年齢人口の増加は進まず,財政健全化に手はついておらず,国の債務は増え続けているにもかかわらず,それを返済する国民の数は減り続けている以上,日本経済は縮小スパイラルに陥り,以前は真剣に危惧された国債の返済不能(国際デフォルト),ハイパーインフレが将来起こる危険は今日でも,払拭仕切れていない.