(6) 解離性神経症状反応(DNSR:dissociative neurological symptom reactions) 発症の要因

・ DNSR は表14 に示すような神経学的に明らかな責任病巣を同定できない種々の症状の発症を糸口として器質的な疾患を除外したのちに診断される.このような反応は予防接種以外のストレス要因によっても惹起される.
・ 具体的には心理的要因(虐待を受けた経歴,トラウマとなる経験),個人のもつ脆弱性(年齢,性格,性別,不安やうつの既往),症状発現の修飾因子(他人が接種後に症状を呈しているのを目撃),引き金となる要因(状況や環境),および症状の持続を説明し得る因子(発症後の医療者側の不適切な対処方法)などが挙げられる.このため,接種後に DNSR と診断されたからといって必ずしも予防接種との因果関係があるとは言えない.なお,不安やうつなどの既往がある場合は,予防接種が反応の促進要因となることがあるので,接種前に既存の精神疾患の既往歴を精査する必要がある.

・ また,DNSR は接種と発症との間隔が短いほど,接種が発症の契機の 1 つになっている可能性が高いと考えられる.その間隔を正確に特定することは難しいが,先にも述べたように他の関連要因を考慮した上で接種後 7 日以内に生じた反応は,ISRR として説明することが可能である.いずれにせよ,発症と症状の持続を説明する上で,冒頭に述べたbiopsychosocial なとらえ方をする必要があり,治療としては症状に応じて理学療法,認知行動療法,薬物療法などが専門医により行われるべきである.