(5)ターナー症候群の健康管理,妊娠出産

・ ターナー症候群では次に挙げるような様々な合併症がみられる(表24).①骨粗鬆症を認め,骨量が低く骨折を来しやすい.②甲状腺機能低下症を高頻度に合併する.③大動脈縮窄症などの先天性心血管疾患がみられ,大動脈瘤破裂は本症の突然死の原因として要注意である.④高血圧,糖尿病,高脂血症があり,これらは動脈硬化症,虚血性心疾患のリスクファクターとなる.⑤加齢とともに難聴の頻度が高まる.⑥肝疾患,炎症性腸疾患,腎臓奇形の頻度が高い.したがって女性ホルモン補充療法を継続して行いながら定期的検査を施行し,必要時に他科と連携して診療する.
・ 本症の自然妊娠率はきわめて低い.海外では提供卵を用いた生殖補助医療が行われているが,本症の心血管系合併症による妊娠・出産時の死亡が報告され,本症の帝切率は有意に高く在胎週数は有意に短く,妊娠高血圧症候群が多い傾向にあるとされている.妊娠・出産に際しては高血圧の治療とともに定期的に心エコーやMRI検査を行い,周産期専門医および循環器専門医を含む医療チームで管理することが推奨される.今後日本でも妊娠を希望する本症が増えて,リスクについての十分な説明と対応が必要になってくるであろう.