(2)STD 各論~最近の話題(表5 にポイントを要約)

1 )性器クラミジア感染症

・ 近年は,クラミジアトラコマティス,淋菌の咽頭感染が女性の STD として大きな問題である.
・ クラミジアおよび淋菌を同時に検出できる核酸増幅キットである SDA 法(BD プローブテックTMクラミジア/ ゴノレア)および TMA 法(アプティマTM Combo2 クラミジア/ ゴノレア)を用いれば,咽頭検体のみならず,他の検体でも交差反応なく検出することができ,有用である.

2 )性器ヘルペス

・ 診断法として,単純ヘルペスウイルス 1 型/ 2 型(HSV-1, -2)の病原体診断法はLAMP法などの核酸増幅法が商業レベルで使用できる(保険適用ではない).LAMP 法は比較的簡単な手技でしかも短時間で結果が出る.
・ 再発を繰り返す性器ヘルペスには,再発抑制療法が推奨される.

3 )尖圭コンジローマ

・ STD で唯一予防ワクチンがある疾患である.子宮頸癌予防のためのHPV ワクチンのうち,4 価,9 価HPV ワクチンについては尖圭コンジローマの原因であるHPV6/11 型の感染予防が証明されている.思春期世代のプレコンセプションケアとして,HPV ワクチンはがん予防のみならず,STD 予防にもなることを啓発していかなければならない.

4 )淋菌感染症

・ 薬剤耐性が最大の問題である.現在,淋菌に対する確実な有効性が証明されているのはセフトリアキソン(ロセフィンⓇ)のみで,他のセフェム,ニューキノロン,マクロライドは耐性株が多く出現しているため推奨されない.

5 )梅毒

・ 2013 年以降,梅毒の流行期である.それ以前と比べ,女性の梅毒罹患者数は約10倍に上昇している.さらに梅毒合併妊娠も急増し,先天梅毒も増加している.梅毒合併妊婦の半数以上は 10~20 代の妊婦である.思春期以降の女性は,特に流行期には梅毒抗体検査は積極的に行うべきである.治療にはアモキシシリン内服が推奨される.