(2)FIGO で提唱されているAUB 診断手順

  • まず,FIGO で提唱されているAUB 診断のアルゴリズムを提示する(Munro M et al. Int J Gynecol Obstet 2018;143:393-408).

1 )初期検査(図7)

  • AUB が複数回発症しているかどうかを確認する.
  • 問診で過多月経が疑われるのであれば血算を行い,治療介入が必要な貧血があるかどうかをみる.
  • 病歴聴取に加え,補助的検査を使用する.排卵障害を示唆する所見があれば,内分泌的評価を行うべきであり,凝固障害を疑う臨床所見があればその評価も必要であるため,これらは採血で判明し得る.
  • また,この指針では,身体検査時に子宮の評価をすること,としているが,解説をよく読むと,経腟超音波断層法検査(TVS)はすべての疾患除外ができてから行われるべきと記載されている.日本においてはTVS が容易に可能であることから,子宮の形態上の評価が問診とほぼ同時に行われている.

2 )子宮の病変評価(図8)

  • 子宮内膜増殖症や悪性腫瘍の可能性が高い場合には,子宮内膜細胞診・生検採取が推奨される.
  • 凝固障害,器質性疾患,排卵障害などのリスクが低く,悪性疾患の除外ができている場合,患者はAUB-E またはAUB-O と推定される.しかし,AUB-E は欧米では頻度が低いものと推測されているが,我々の調査ではかなり多いと報告されている.
  • TVS で子宮に異常所見がある場合には,子宮鏡,卵管造影,MRI などが推奨されており,図8の説明が書いてある前述のMunro らの論文には以下のような記載がある.
    「 構造的異常のリスクが高ければ,次のステップとして経腟超音波検査が行われる.子宮内膜の評価が十分でない場合,あるいは子宮内腔に影響を及ぼす異常が示唆される場合は,子宮鏡検査または子宮卵管造影検査のいずれかが適応となる.性交経験がなく,子宮鏡検査や子宮卵管造影が不可能な場合は,MRI の適応となることがある」

 性交経験がなくても,軟性子宮鏡,細径硬性鏡などを用いれば子宮鏡検査は可能であることも多く,MRI は日本においては容易に行える診断手法である.また,子宮構造異常を疑う場合に卵管造影を行う医師は日本にはほぼいないと考えられ,本指針をそのまま本邦の診療に当てはめることには無理がある.よって,本邦の実態に合わせた診断手順が必要である.