(2)プライマリケアですること

1 )診断(図24)

・ やせ願望や肥満恐怖は体重を増やしたいと言いながら実際の行動をしないことで,ボディイメージの障害は病識のなさや本人の希望体重が非現実的なことで判断できる.低カロリー食や過活動でやせる行為の一方で,飢餓の反動で,レシピや料理番組への興味,家族への強制摂食,食品の貯蔵,料理好き,過食など食に執着した行動がみられる.
・ 審美系・長距離走のスポーツ歴,体重の増減を伴う既往症は誘因になる.

2 )鑑別診断

・ 本症の診断基準には臨床検査項目は含まれない.臨床検査の目的は,やせを来す器質的疾患の鑑別(下垂体・視床下部腫瘍,慢性炎症性腸疾患,結核などの感染症,慢性膵炎,甲状腺機能亢進症,糖尿病,悪性腫瘍など),栄養アセスメント,合併症の精査である.行き過ぎたダイエットによる体重減少性無月経の患者には病識があり,情報提供すると体重を回復させる.

3 )症状と臨床検査異常

・ 身体症状と検査異常を示した(表36).重篤な合併症は低血糖性昏睡,感染症,腎不全,不整脈,心不全,電解質異常,上腸間膜動脈症候群,Refeeding 症候群などである.

4 )内科的な緊急入院の適応の判断

・ 死亡率は 6 ~ 11% /  6 年で,精神疾患中で最も高い.
・ 全身衰弱,重篤な合併症,標準体重の55%以下のやせは,入院の適応である.1 カ月で10%以上の体重減少があり,摂食量の増加が期待できない場合も考慮する.

5 )他の精神疾患を鑑別すべき状況

・ 強い抑うつや不安,繰り返す自傷行為,自殺願望,著しい情緒不安定,繰り返す万引きや性的逸脱がある場合は,患者の中心的な病態は他の精神科疾患を鑑別する必要がある.

6 )労作制限の判断

・ 安全配慮と悪化を予防するために活動制限の目安が作成されている(表37).
・ 標準体重の55%未満では,意識障害や運動障害が出るので,緊急入院の適応である.65%以下ではT リンパ球減少や筋肉組織の激減,飢餓に伴う精神症状の悪化が起こるので,入院治療が勧められる.もし,就学・就労する場合は,移動の送迎,短縮就学・就労,隔日通学,保健室での補食,体育の禁止などの対応が必要である.75%以下では身長が伸びず,骨粗鬆症が悪化するので,水泳・長距離走・登山や競技スポーツは禁止である.
・ 体重を増加させると活動できるという治療動機に利用できる.