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風 疹 と 母 子 感 染 2012年版
〜2012年の風疹再流行にあたって〜


横浜市立大学 産婦人科
奥田美加、平原史樹


→ 風疹流行状況(緊急アナウンス)

→ 風疹と母子感染 2005年版

I.メッセージ

 風疹が近年になく流行しています。妊婦さんが妊娠初期に初めて風疹に罹患すると、胎児に感染し白内障や緑内障などの眼症状、先天性心疾患、難聴などを引き起こすことがあり、先天性風疹症候群(congenital rubella syndrome : CRS)とよばれます。妊婦さんは風疹にかからないように注意してください。周りの人は、妊婦さんたちを守るためにできることがあります。

1.<妊婦さんへ>

妊娠24週ころまでは人ごみをなるべく避けましょう

妊婦さんのご家族はすぐにワクチン接種を受けましょう
  妊婦さん本人は風疹ワクチン接種を受けられません

妊娠が終わったらすぐワクチン接種を受けましょう

「もしかして風疹?」と思ったらかかりつけの医師にまず電話で相談を

同居家族や職場同僚に風疹患者さんが発生したらかかりつけの医師に相談を

 

2.<その他の方へ>

すぐに麻疹風疹混合ワクチン接種を受けましょう
  特に 1979年4月2日〜1987年10月1日生まれの女性
      20〜40代の男性
      妊娠を希望する女性 

子どもの頃に受けたことがある人も受けましょう

ワクチン接種を受けた女性は2ヶ月間の避妊を

 

3.<医療関係者の方へ>

風疹は全数報告疾患です

ワクチン接種の普及にご協力をお願いします

風疹罹患(疑いを含む)妊娠女性への対応

抗体価を判断する際の注意
  高い風疹HI抗体価や、風疹特異的IgMが陽性でも、問題のないケースがほとんどです

 

II. Q&A

   (参考)国立感染症研究所 感染症情報センターホームページのQ&A 内容は一部重複しています

1.<予防接種編>

Q 妊婦は風疹にかからないように予防接種を受けられますか?

A 妊娠中は風疹の予防接種を受けられません。風疹ワクチンは生ワクチンという種類で、生きたワクチンだからです。なおインフルエンザワクチンは不活化ワクチンという種類で、妊娠中も接種可能です。

Q 妊娠しています。家族に予防接種をすすめるべきですか?

A ぜひともおすすめします。とくに20〜40歳代の男性、つまり妊婦さんの夫世代において免疫を持っていない人の割合が高く、風疹患者数が最も多いです。家族の接種が妊婦さんへ影響することもありません。なお、近年、麻疹(はしか)も時々流行しますので、接種を受ける場合は、麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)をおすすめします。

Q 産後に予防接種を受けられますか?

A 受けられます。出産後など、今回の妊娠が終了した時はチャンスです。すみやかに受けるようにしましょう。産後4日目に接種している施設によれば、効果や副反応について特に問題はありません。風疹抗体価がHI法で16倍以下の方が対象ですが、それ以上の方が接種を受けても差し支えはありません。

Q 授乳していますが、予防接種を受けてもいいですか?

A 受けられます。母乳中にわずかにワクチンの成分が検出されることがありますが、それによる赤ちゃんへの影響はありません。

Q 麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)がいいのですか?風疹だけのワクチンはありますか?

A 風疹だけの単抗原ワクチンもあります。そちらを選択しても差し支えはありません。ですが、近年、麻疹(はしか)も時々流行しますので、接種を受ける場合は、MRワクチンをおすすめします。現在の幼児は2006年に認可されたMRワクチンを、1歳時と小学校入学前の2回受けています。

Q もう子どもはつくらないので、予防接種は受けなくてもいいですね?

A できるだけ受けてください。みんなで免疫を持って日本から風疹と麻疹をなくしてしまいましょう。自分が風疹にかかって妊娠中のママ友にうつしてしまったら?考えるだけでも恐ろしいことです。

Q 一日も早く子どもが欲しいので、予防接種を受けたくないのですが?

A 風疹抗体(=免疫)がない人や、あるかどうかわからない人、風疹予防接種を2回以上受けたことがない人は、妊娠の計画を2ヶ月だけ待ってMRワクチンを受けてください。やっと赤ちゃんを授かってすぐ風疹にかかってしまうのはとても悲しいです。パートナーにも忘れずに受けてもらいましょう。風疹ワクチン接種は妊娠の可能性のない月経中や直後の時期を選び、2ヶ月間の避妊を原則とします。

Q 不妊症の検査を始めようと思っています。予防接種を受けてもいいですか?

A 不妊症の検査には少々時間がかかりますので、治療が始まる前に、MRワクチン接種を済ませましょう。ただし、検査中に妊娠することがありますので、できれば、検査開始前に接種を済ませて避妊するか、医師に相談して妊娠に直接つながる検査を待ってもらうようにしましょう。

Q 風疹の予防接種を受けて2ヶ月以内に妊娠が判明してしまいました

A 妊娠中に風疹ワクチンを接種されたため胎児に障害がでたという報告はこれまで世界的にもありませんので、妊娠を中断する理由にはならないとされています。アメリカでは避妊期間は1ヶ月です。まずは産婦人科を受診し相談してください。

Q 予防接種を受ける前に、抗体検査を受けた方がいいですか?

A 省略してかまいません。現在の流行状況を考えると、検査を受けて結果を待つ時間が惜しいですし、検査費用も節約できます。抗体のある人が予防接種を受けても問題ありませんし、ブースター効果と言って弱くなった免疫の再活性化が期待できます。現在の幼児がMRワクチンを2回受けているうちの2回目を受けると考えてはいかがでしょうか。

Q 母親から、「あなたは子どものころ風疹にかかった」と言われましたが?

A よほど確実な診断だったのでなければ、予防接種を受けてください。子どもさんの診断の場合、血液検査による確実な診断をなされていないことがあり、おとなになって実は風疹の免疫がなかった、というケースが約半数あるようです。

Q 予防接種はどこで受けられますか?

A お近くの小児科や産婦人科、内科診療所、もしくは地域の保健所、医師会などにお問い合わせください。

Q 予防接種はいくらかかりますか?自治体の補助はありますか?

A 金額はそれぞれの医療機関ごとに設定されていますのでお問い合わせください。MRワクチンですと数千円〜1万円ほどかかるようです。また、MRワクチンの定期接種は現在1歳の幼児と小学校入学前1年間となっていますので、それ以外の世代の方は自己負担となります。

Q 中学1年生と高校3年生の子どもにMRワクチン接種の通知が来ましたが?

A 2012年までの経過措置で、中学1年生と高校3年生相当の年齢の方への接種が全額または一部の公費負担で受けられます。すみやかに受けさせてください。

Q 前回の妊娠で風疹抗体価がHI法で16倍なので、産後に風疹ワクチン接種を受けましたが、今回妊娠初期検査でまた16倍と言われました。もう一度接種を受けた方がいいですか?

A 低抗体価(HI法で8倍または16倍)の方が風疹ワクチン接種を受けて数ヶ月以上経つと、同程度の抗体価となっているケースが多くみられることがわかってきました。こうした場合に再度接種をすべきかの結論は出ていません。接種後1ヶ月程度で測定すると抗体価が上昇しているので、効果が全くないわけではないと考えています。

 

2.<妊娠と風疹>

Q 妊娠しています。気をつけることは?

A 妊娠24週頃まで、特に妊娠12週未満の妊娠初期は可能な限り人ごみを避ける、子どもの多い場所への長居を避ける、同居の家族に予防接種を受けてもらう、発疹(ブツブツ)や発熱が見られたらかかりつけの医師にまず電話で相談する(他の妊婦さんへの配慮)、風疹患者さんとの濃厚かつ確実な接触があったらかかりつけの医師に相談する、などの注意をしてください。風疹患者さんと一瞬すれ違っただけでは通常は心配ありません。

Q 妊娠初期でなければ 風疹にかかっても大丈夫ですか?

A 妊娠週数がすすむほど赤ちゃんへの影響の確率は下がります。前項では念のため妊娠24週頃までの注意を促していますが、排卵前および妊娠20週以降の発症では基本的に永続的な障害を残しません。

Q 風疹抗体が陰性でなければ心配ないですよね?

A 抗体を有する方でも、風疹患者との濃厚な接触により、まれに再感染から先天性風疹症候群を起こした例が報告されています。初感染に比較すればリスクはかなり低いのですが、万が一を考えて、風疹の流行中は上記の注意事項を実行してください。

Q 風疹の抗体価が高く、最近風疹にかかったかもしれないと言われ心配です。自分には症状もなく、まわりに風疹患者もいません

A まずは問診を再確認します。風疹を疑う症状(発熱,発疹,リンパ節腫脹など)、風疹患者との濃厚な接触の有無などです。これらがなければリスクは低いと考えられます。リスクの程度を専門家が判断する相談窓口がありますので、かかりつけの医師とよく相談してください。