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新生児聴覚スクリーニングマニュアル
はじめに目次123456789101112
資料1
資料2資料3資料4資料5資料6資料7


7.地域における聴覚障害児支援ネットワークと関係機関の連携

(1)新生児聴覚検査体制の整備
 ア. 協議会の設置
  (ア) 自治体は事業の円滑な推進を図るため、学識経験者、関係医師会、医療機関、保健所、児童相談所、市区町村、難聴児療育機関関係者、ろう学校関係者及び福祉関係者、当事者団体代表等による協議会を設置する。
  (イ) 協議会は、自治体の諮問を受けて、聴覚検査、精密検査の実施体制の検討、カウンセリング体制、診断確定後の支援に関する実施体制の検討及び事業開始後の問題点等について検討する。
 イ. 現状の把握
   自治体は、検査の実施にあたって関係機関の協力を得て、地域内の以下の機関について把握する。
 ・新生児の聴覚検査のできる医療機関(OAE又は自動ABRの普及状況)
 ・乳幼児の聴覚精密検査のできる医療機関
 ・聴覚障害をもつ乳幼児の早期支援のための専門機関
  (難聴幼児通園施設、聾学校幼稚部など)
 ・カウンセリング実施機関
 ウ. 検査実施マニュアルの作成
   自治体は、本マニュアルを参考に、聴覚検査に関わる関係者のための検査実施マニュアルを作成する。作成にあたっては、協議会等の協力を得る。
 地域の関連医療機関、支援の専門機関等のリストも加える。
 エ. 普及・啓発
  (ア) 自治体は、保護者に対して、検査を行うことの意義、目的等について十分理解できるよう、また過度な不安を与えないよう、あらゆる機会を通じて周知徹底を図る。特に、母親学級、両親学級等あらゆる母子保健事業の場を利用して、本検査の趣旨等について周知するよう努める。
  (イ) 自治体は、保護者の不安の軽減を図るため、いつでも相談ができるよう、問い合わせ先、相談先等について、保健所、市区町村、関係機関の協力を得て周知する。また、出生した施設で聴覚検査を受けられなかった児の検査漏れがないように、検査可能な医療機関の周知等を同様に行う。
 オ. 関係者への研修の実施
   自治体は、各関係機関の職員に対し、検査実施マニュアルを基に研修を実施する。 研修の対象者は、以下のとおりである。
  • 医療機関関係者(産婦人科、小児科、耳鼻科などの医師、看護師、助産師、新生児聴覚検査担当者、言語聴覚士、臨床心理士、MSW等)
  • 保健所、保健センター、市区町村職員
  • 療育・教育関係者(聾学校を含む) 他
  • 福祉担当者、児童相談所職員
 カ.検査の実績等データの把握・分析
  (ア) 自治体は、保健所、区市町村、関係機関及び保護者の協力を得て、検査の実績、その後のフォロー状況等について把握する。
  (イ) 自治体は、検査実施上の問題点、検査後の療育上の問題点等を検討するために、上記により把握したデータを協議会等の中で分析し問題の解決を図るなど、事業の円滑な推進に努める。

(2)早期支援体制の整備
 聴覚障害が発見された児の保護者にとって、その後の児の発育・発達に対する不安は大きいものである。聴覚障害があっても、早期支援によって言語の獲得や社会生活ができるようになること等を説明することにより保護者は安心する。
 現状では、特に乳幼児に対する支援体制が充分とは言えず、聴覚障害を持つ児と親が必要な支援を受けられるように、福祉、教育等の関係機関と連携して人材の育成等療育体制を整える必要がある。また、通園(通学)による療育(指導)のみではなく、家庭で直接指導する、派遣療育(指導)の実施も今後の課題である。

(3)関係機関との連携等
 ア. 関係機関との連携
   自治体は、聴覚検査から療育まで一貫した支援を行うために、協議会等を活用し、保健所、市区町村(保健センター)、各関係機関との協力体制を確立し十分な連携を図る。
 イ. 地域での個別支援
   保健所及び市区町村(保健センター)、児童相談所は、各関係機関と密接な連携をとりながら、以下の点に留意し地域での個別支援を行う。
  (ア) 新生児聴覚検査で要精密になった保護者の不安が大きい時には、主治医と連絡をとり個別の援助を行う。また、精密検査を受けるにあたっては、医療費の助成など、利用可能な公的助成制度について、保護者に情報提供する。
  (イ) 精密検査で聴覚障害が確認された児に対して、主治医及び早期支援実施機関との連携のもと、日常の育児の相談、保育、療育などについて、保護者の相談にのるなど地域での援助を行う。また、様々な福祉制度の紹介など、福祉関係者と連携をしながら援助していく。
 ウ. 保健サービスのための情報提供
   「要再検」児、聴覚障害児およびその疑いの児の保健サービスのために、保護者の了解を得て、各機関は次の事項を、発生後速やかに保健所又は市区町村(保健センター)へ報告する。
  (ア) 新生児聴覚検査機関、再検査機関は、児の氏名、住所、生年月日、性別、出生体重、母の氏名、検査年月日、検査方法(ABR, OAEの別)検査結果、合併症、紹介先機関、検査実施機関名等
  (イ) 診断機関は、機関名、精密診断を実施した症例の、氏名、住所、生年月日、性別、出生施設、診断年月、診断名、合併症、聴覚障害の程度、紹介した早期支援実施機関名等
  (ウ) 早期支援実施機関は、児の氏名、住所、生年月日、性別、来所年月日、聴覚障害の程度、支援開始時期、選択されたコミュニケーションモード、補聴器装用開始時期等
 エ. 個人情報の保護
   行政機関、保健所、市区町村(保健センタ−)、本事業に関わる関係機関は、新生児聴覚検査、精密検査の結果等、その後の早期支援の内容及び地域ケアの内容など、その保護者及び児の個人情報の保護には充分留意する。

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