11.脱毛,アピアランス

抗がん薬と脱毛の関係,予防法と社会的資源の活用について.

(1)脱毛

1 )脱毛が起こるメカニズム

・ 成長期の頭髪は成長が早いため,体毛の中でも抗がん薬の影響を受けやすく,脱が顕著に認められる.脱毛は頭髪だけでなくまつ毛,眉毛,鼻毛,髭,腋毛,陰毛にも生じる.
・ 発現時期は成長期脱毛の場合,抗がん薬治療開始後約 2~3 週間(早くて 10 日ほど)で始まり,休止期脱毛は抗がん薬治療開始後 3~6 カ月で生じる.薬剤や治療法により異なる.
・ 抗がん薬治療による脱毛は一過性で可逆的のため,治療終了後 1~3 カ月で毛母細胞の再生が始まり,1 年ほどで回復する.再生後の毛髪は毛母細胞再生時の変化などから,色調や髪質が脱毛前と異なり,硬くなったり,軟らかくなったり,縮れたり,白髪になることもある.約 2 年で元の髪質に戻るといわれている.
・ 頭部への放射線照射は皮膚の炎症を起こし,炎症がひどいと毛根まで影響し脱毛が起こる.通常炎症が治まってから 2~3 カ月で毛髪の再生が始まる.
・ 脱毛後の再発毛や,毛髪の質・色調の変化は,十分に回復しない場合もある.

2)脱毛にかかわるケアの特徴1)

脱毛ケアのポイント
・脱毛を予防することはできず,留めることもできない.
・ 外観の整え方について相談に応じたり,辛い思いを聞くなど,精神的な苦痛を和らげる援助が求められる.

1.外観の整え方 ・髪は短い方が抜け毛の総量が少なく,ショックも軽い. 脱毛が始まった時に手入れが楽,長い髪よりもボリュームがあるように見える,などの利点もあり,事前に短く切っておくことを勧める.
2.頭皮の保護と脱毛時のケア ・シャンプーは中性のものを使用し,週 2 回程度に留める.
・ブラッシングは強くせず,パーマはかけない方がよい.
3.セルフケア支援 ・ 頭皮の清潔:頭皮を傷つけないよう爪は短く切り,シャンプーはよく泡立ててから,頭皮を優しく洗浄しよくすすぐ.
・ 頭皮の保護:毛髪の飛散防止・頭部の保護や保温・容姿の補整のために,帽子やバンダナの用意を勧める.
4.脱毛の抑制

・ 頭皮冷却よる脱毛の程度の軽減について,日本人を対象とした明確なエビデンスはない.
・ 頭皮冷却法とは,クーリングキャップを装着し頭皮を冷やすことにより血流を減らし,毛根への抗がん薬の作用を少なくすることで脱毛を抑制するものである.

(2)外見の変化による苦痛の顕在化2)

・ がん医療において治療成績や生存率が最優先課題であった頃と比べ,治療成績の向上とともに患者の QOL 向上が求められるようになった.治療中にあっても,社会参加の継続や治療後の社会復帰を希望する患者が増加してきた.それに伴い,治療による外見の変化がもたらす苦痛が問題として顕在化してきている.
・ 自己イメージに関連する心理的苦痛である.「女性らしさ」がなくなった,「魅力的」 ではなくなったというような一般的な美醜の問題に加え,病気を意識することで「自分らしくない」という自己イメージの低下をもたらしやすいという問題がある.
・ 他者の存在に大きく依存する心理社会的苦痛.がんに罹患していることを他者に知られ,従来の関係を維持できなくなるのではないかという,他者とのかかわりのなかで生じる相対的な問題がある.

(3)アピアランスケアとは2)

・ 外見,容姿を示す言葉であるアピアランス(appearance)を用い,がん患者に対する外見関連のケアを「アピアランスケア」という.外見変化に伴う,自分らしさの喪失や,他者との関係性が変化する不安に対処できるよう援助することである.
・ アピアランスケアとは,医学的な支援に加え整容的・心理社会的な支援を用いて外見の変化を補完し,外見の変化に起因する患者の苦痛を軽減するためのケアのことである.
・ 整容的な支援とは,「自己イメージの変化」に対して行う,スキンケアや化粧,ヘアスタイリングなどのケアを指す.
・ 心理社会的な支援とは,「社会における関係性の変化」に対して行うもので,外見の変化の受け入れを促し,「自分らしい」スタイルを取り入れて他者との関係性において自己効力感を向上できるよう支援することである.

(4)社会的資源の活用

自施設内のアピアランス支援体制を確認する(図21).
・病院施設内でアピアランスケアの研修を受けている医療スタッフを確認する.
・病院施設外で活用できる資源や情報を確認する.

文献
1) 国立がん研究センター研究開発費 がん患者の外見支援に関するガイドラインの功逐に向けた研究班編.が
ん患者に対するアピアランスケアの手引き,金原出版,2016.
2)野沢桂子.がん患者のアピアランスケア,南山堂,2017,2-9.