1.災害時におけるロジスティクスの重要性

 ロジスティクス(Logistics:兵站(へいたん))は軍隊においては物資の補給や資器材の管理,部隊の展開や維持などに係る後方支援活動を意味する.企業においては必要な原材料の調達,生産,在庫管理,輸送,販売まで物流を効率的に行う管理システムのことを意味し,これは企業運営に必要不可欠である.後方支援活動が機能不全であれば部隊・企業の任務遂行・業務運営に多大な支障が出ることはいうまでもない.

 災害規模が大きくなるほどライフライン(電気,水道,ガス,通信,道路交通網など)被害は甚大となり,結果として円滑な医療活動が困難になる.災害時に医療活動を効率的に行うためにはロジスティクスに関する識能が必要である.災害医療ロジスティクスに求められる能力で特に重要なのは情報管理と資源管理である.

 災害時の情報収集・発信は以下に示す情報システム・ツールを用いることが有用である.災害時に情報難民とならないために防災グッズとしてスマートフォンと手動式充電器を備えておくことが極めて有用である.また情報共有ツールとして電子メールやSNS(LINE,Facebookなど)が有用であったことは過去の災害時にも実証されている.加えて適時にPEACEに各施設の情報を入力することで被災側と支援側で正しい情報が共有され,迅速な支援に結びつくことが期待される.

 資源の調達については被災都道府県の災害拠点病院や大学病院,所属医師会などに物資支援の要請をすることになる.平素より自施設周辺の災害拠点病院などについては掌握するとともに,被災後 72 時間は自活できるよう非常時の備蓄(分娩セット,産褥セット,おむつ,ミルク,水,食料,毛布,タオル,新生児の衣類など)を準備しておくことが望ましい.