1.医療紛争と医療者・患者の信頼関係

 医療の提供者(医師など)と受給者(患者)との間には医療に関する認識に大きなずれがある.医療者は“医療には絶対という言葉はなく,不確実なものであり,個人差も大きく,限界があり,危険を伴う”との認識がある.一方,患者は“医療は100%確実なもの,現代医学は万能で,あらゆる病気はたちどころに発見され,適切な治療を受ければ,まず死ぬことはない.医療にはリスクが伴ってはならず,100%安全が保障されなければならない”と認識している.したがって,両者の認識のずれを克服し, 相互の信頼と協働に基づき医療を実践することが求められる.

 医療の負のイメージに「医療過誤」,「医療事故」,「医事紛争」なる語句がある.医療過誤とは人為的ミスに起因し,医療従事者が注意を払い対策を講じていれば防げるケースをいう.医療事故とは,過誤と不可避的なケースも含まれる.そして医事紛争とは両者間のトラブル・クレームであり,医療結果と患者期待値の非一致で起こる. 両者の信頼関係が大きければ医療過誤・事故が起きても紛争が回避でき,逆に,信頼関係がなければ,医療過誤・事故がなくても紛争となってしまう(図1)