1.はじめに

 2011年の東日本大震災は死者数(関連死含む)10,567人,行方不明者数1,218人(2020年末現在宮城県危機対策課調べ)と,合わせて1万名以上の人命が失われた未曽有の大震災だった.そして2020年初頭から全世界は新型コロナウイルス感染症のパンデミックに見舞われ,わが国でも,2021年4月末の時点で死者が1万名に迫るなど予断を許さない状況が続いている.

 パンデミック下では,妊産婦や乳幼児にはひときわ慎重な感染予防対策が必要であるにもかかわらず,自粛生活などで社会との接点が少なくなり対人関係も希薄になる. もし,このような状況で自然災害が起こったら,妊産婦や乳児にはストレスが強く,十分な医療ケアを受けられないために体調が急変するリスクが高まる.さらに,在宅避難も視野に入れる必要があることから,適切なケアを受けられる情報を得ることが困難になる.住まいの耐震補強や備蓄など,ハード面の備えも大切だが,ソフト面,つまり,正しい情報を得ること,親しい人やコミュニティ,支援者や自治体とつながっていること,家族の健康を維持することなど,受援体制(援助を効率よく受ける体制)の構築がこれまで以上に求められる.