2.硬膜外無痛分娩から帝王切開術に移行する際の対応

  • 硬膜外無痛分娩から帝王切開術の麻酔に移行する際には
    ①硬膜外カテーテルから局所麻酔薬を追加して硬膜外麻酔を行う
    ②硬膜外カテーテルは抜去して脊髄くも膜下麻酔を行う
    の2つの選択肢がある.
  • 硬膜外麻酔による妊産婦死亡が続いた事実に鑑みると,一般的には②を推奨したい.
  • 対応フローチャートを図2に示す.

ポイント

  • 硬膜外腔に局所麻酔薬を投与した直後に脊髄くも膜下麻酔を行う場合,脊麻針から逆流する溶液が脳脊髄液か局所麻酔薬か鑑別し難いこと,硬膜外腔内圧が高く局所麻酔薬の一部がくも膜下腔に移行した状況での脊髄くも膜下麻酔では,高位脊麻の危険性が高まる点に注意が必要であることだ.
  • 硬膜外麻酔に習熟している施設であっても,局所麻酔薬は少量分割注入に徹し,血管内誤注入やくも膜下誤注入に早い段階で気付くようにする.盲目的に挿入される硬膜外カテーテルの先端は,その位置を常に疑ってかかるべきである.硬膜外麻酔や脊髄くも膜下麻酔の経験豊富な医師であっても,局所麻酔薬中毒や高位脊麻など稀な合併症は未経験であろう.稀な合併症をこれまで経験したことがなくとも,それは手技が上手であることを意味せず,単に施行数が個人では足りていないだけである.