(4)AUB-O とAUB-E の診断について

 今回の調査では,AUB-O(排卵障害)がCOEIN の中で一番多い結果であった.その一方で,排卵障害などの他の原因が特定できない場合にAUB-E(子宮内膜機能異常)と診断されることとなる.海外の報告では,AUB-E が3~5%程度とされているが,AUB-E の割合が多い点が,今回の調査の特徴として挙げられる.

 二次調査(詳細調査)のAUB-O については,卵巣機能不全・PCOS・下垂体機能異常・内分泌異常・その他の5つに分類して調査を行った.AUB-O の約70%はPCOSが原因であり,特に20~30 代に多い傾向だった.その一方で,少数ではあるが下垂体機能異常や内分泌異常も原因となっており,AUB-O を疑った場合,下垂体ホルモンや甲状腺ホルモンなどの検査も行うことが重要であると考えられた.

 一方,AUB-E は,20~40 代で約30%ずつとなっており,年齢による違いは認められなかった.また,図6からは不定期な月経間期出血を認めた場合にAUB-E と診断されることが示唆された.

 本来であれば,AUB system 1 で,AUB に関連する問診を正確に取るところからスタートする.その上で,月経周期異常によるものか,経血量の異常によるものかを判断することとなる.一般的な傾向として,経血の異常はPALM-COEIN の器質性疾患(PALM)と関連が強く,月経周期異常は非器質性疾患(COEIN)と関連が強い.

 system 1 でAUB と診断された場合,その原因疾患の探索のためにPALM-COEINを用いて診断する.器質性疾患が原因となっていないかを経腟超音波検査やMRI 検査,子宮内膜細胞診などで診断し,非器質性疾患の原因検索としては,ホルモン採血などを行うこととなる.その上で,非器質性疾患が疑われた場合,AUB-O やAUB-C(凝固異常),AUB-I(医原性:ホルモン剤内服中や IUS 挿入中など)を診断していく.さらに,AUB-N は,原因不明な疾患ではなく,分類不能な疾患(例えば,帝王切開瘢痕部症候群や子宮動静脈奇形など)が含まれてくる.最終的に原因がはっきりとしない場合,除外診断的にAUB-E と診断されることになると考えられる.そのため,適切な検査によってAUB の原因疾患の探索を行った上で診断を行うべきであり,安易にAUB-E と診断することは避けるべきである.