(4)治療・管理

・ 外性器異常に対しては,主に機能回復目的に手術対象となるものが多い.また,卵巣機能不全例に対しては,女性らしさや健康維持のためのエストロゲン補充療法が行われる.

1 )総排泄腔外反症

・ 幼少期から手術が必要となる代表的な疾患である.先天性下腹壁形成異常で,臍帯ヘルニアの下方中心に外反した回盲部が存在し,その両側に二分した膀胱が外反して存在する.鎖肛,大腸低形成,内・外性器異常などを有し,多くは腎奇形,脊髄髄膜瘤なども合併する.数回の外科治療と長期入院が必要となる.女性の場合,内性器は双角に分離しているため子宮腟形成が必要で,成長しても,外陰形成,腟形成,膀胱拡大術,腎不全による腎移植の必要な例も多く,一生涯にわたるケアが必要である.

2 )Rokitansky-Küster-Hauser 症候群

・ 胎生期のミュラー管の形成異常によって子宮の形成不全と腟欠損を来す疾患である.多くは子宮が機能性でなく,卵巣機能は正常であることから,治療の重点は事実上,性交可能な腟の形成手術に置かれる.
・ 造腟術は本人の希望に基づき 17~30 歳くらいに施行されることが多い.腟前庭部から 4 カ月程度をかけて自己拡張により腟を形成していく Frank 法,腸管を利用する Ruge 法,腹膜を利用する Davydov 法,真皮を移植する McIndoe 法,造成した腟に上皮再生を待つ Wharton 法など様々な術式が開発されてきた歴史がある.
・ 通常は妊孕性を欠くが,IVF サロゲート治療により自己の卵子を用いたいわゆる代理出産に養子縁組を組み合わせることにより子をもつことが可能であり,日本においても事例報告がある.

3 )月経血流出障害を伴う異常

・ 周期的な腹痛を主訴としている場合が多い.診断と対応が遅れた場合には,本人の苦痛を長引かせるのみならず,骨盤腔内に逆流した月経血により高度の子宮内膜症や骨盤内癒着を来すことがある.薬物療法や経腟ドレナージに固執して手術療法を回避した結果,月経血流出障害の改善が不十分であると,妊孕性を損なう結果となることがある.
・ このうち処女膜閉鎖症の場合,外来での単純な切開処置のみで月経血の流出が可能となる.再発は稀である.
・ しばしばみられる重複子宮重複腟片側腟閉鎖(Wunderlich 症候群)に対しては,麻酔下に経腟的に開窓を行うのみでやはり月経血の流出が可能となる場合が多い.
・ 腟欠損と子宮頸部低形成を伴う子宮留血腫に対しては,単に開通術・子宮形成術のみでは済まず,予想外の癒着に遭遇することもあり,術後には感染,血腫再発,疼痛などの合併症に注意が必要である.閉塞のパターンによっては,閉塞部の開通が困難となり,子宮摘出を行わざるをえない症例も存在する.妊孕性の温存が困難である場合には,正確な説明に加え,カウンセリングと術後の心理的ケアが必要となる.

4 )不妊・流産の原因となる子宮奇形

・ 子宮奇形はミュラー管の癒合不全により発生し,そのうち手術適応となるのは,一部の中隔子宮に限られている.実際,子宮奇形の中で中隔子宮は最も頻度が高く(約35%),最も生児獲得率が低い(43%).現在は,主に低侵襲の子宮鏡下手術として行われる.

5 )アンドロゲン不応症

・ アンドロゲン受容体の機能が一部または全面的に欠如するアンドロゲン不応症は,46, XY の核型を有する性分化疾患の代表的疾患である.この疾患の患者は胚細胞腫瘍やセミノーマが発生する確率が高いとされ,予防的性腺摘除術を行うことが勧められる.第 2 次性徴(女性化)が完了した思春期以降に性腺摘出を行うことが一般的に行われ,その後にエストロゲン補充を行うことが推奨されている.
・ 子宮形成がないので,エストロゲン単独製剤でよい.子宮形成があるような場合(XY 純粋型性腺形成不全症(pure gonadal dysgenesis)など)には,プロゲスチン製剤の併用が望ましい.
・ 若年時には腟狭小であってもその後の腟発育により腟形成術は不要であることも多い.成人到達後にも腟長が不十分で性交困難を来す場合には,希望に応じて手術を行うこともある.

6 )ターナー女性

・ 低身長で発見されたターナー女性に対しては,通常小児科医により成長ホルモン療法が行われる.
・ ほぼ必発である卵巣機能低下に対しては,エストロゲン補充療法を行う.およそ 12 歳,遅くとも 15 歳までに少量エストロゲン投与を開始するのが望ましい.2 ~ 3年間の漸増期間の後に成人と同様のホルモン補充療法に移行する.第 2 次性徴が不十分な場合には,エストロゲン剤の増量(E2 貼付剤0.72㎎なら 2 枚ずつの使用)を考慮する.
・ 妊孕性については,卵子枯渇により妊孕能を欠く場合がほとんどである.結婚や挙児の可能性について悩む患者が多いため,カウンセリング,適切なアドバイスが必要になる.すなわち,不妊治療の可能性についての卵巣機能評価,専門施設紹介,卵子提供を希望する場合の情報提供である.

文献
日本産科婦人科学会,日本産婦人科医会編集・監修.ガイドライン婦人科外来編2020.125-132.
武谷雄二他監修.プリンシプル産科婦人科学第3 版.メジカルビュー社.231-238.
日本産婦人科医会版.研修ノートNo.92「産婦人科における臨床遺伝学」.2015.
深見真紀.今日の臨床サポート,性分化疾患(小児科・産婦人科).2018.
難病情報センター.総排泄腔外反症(指定難病292).<https://www.nanbyou.or.jp/entry/4592>
岡垣竜吾.Rokitansky-Küster-Hauser 症候群,産科と婦人科.2010,11,27,1295.
岡垣竜吾.先天性子宮形態異常.産科と婦人科.2017,2,73,193.
菊地盤.子宮鏡下中隔手術,OGSNOW 7,メジカルビュー社.2011,20.