(3)月経調節に関して

1 )初経の遅れに関して

・ 初経前からの激しい運動による体脂肪の不足が初経発来を遅延させると考えられてきたが,2018 年の一般女性の調査では体脂肪と相関するBMI がやせすぎとされた17.5 ㎏ / m2 が初経発来の平均値と報告され,BMI でなく,LEA からの判断が求められる.
・ LH が3.0mIU/mL 未満であれば栄養指導を行い,LBM を増やす.初経閾値と推定されるLBM30㎏は最低確保する必要がある.3.0mIU/mL 以上あれば,視床下部性ではないと判断され,EA が増えれば月経が生じる状態と説明する.ホルモン投与などによる消退出血を起こすかはアスリートおよび保護者と相談の上決定してよい.

2 )月経の移動に関して

・ 初経開始は成長ピークの約 1 年後とされてきたが,一般で20%,アスリートでは7%で成長ピーク前に初経が開始する.成長スパートに関係なく,体脂肪の増加ピークがくると初経が開始する.エストラジオールは軟骨の増加に働くIGF- 1 の産生を抑えるため,骨端線(成長板)の閉鎖につながる.低用量ピル開始のタイミングは初経後 3 カ月とされるが,身長の伸びが 1 年間に 1 ㎝を切ると成長スパートの終了と判断されるので,成長スパート終了後とした方がよいと思われる.既に初経開始して成長スパートが終了している場合は中用量で一時的に月経移動するか,低用量ピルによって継続的にコントロールするかは競技の状況に応じてアスリートと保護者の判断に委ねる.
・ 思春期に低用量ピルを使用する際の注意点は,この年代でも手術をすることがある点である.膝前十字靱帯損傷のピークは 16 歳で,手術が選択されることは稀ではない.術前 4 週間が禁忌項目に挙げられており,手術時には血栓症に配慮を要する旨,添付文書に書かれている.産婦人科以外の科ではこの年代での低用量ピル内服をほぼ想定していないので,他科受診の際には低用量ピルを内服している旨を伝えるようにする.