(3)外傷と常位胎盤早期剝離

  • 常位胎盤早期剝離は妊婦の鈍的腹部外傷による重篤な産科的合併症で最も多いものであり,高度の腹部外傷では40%,軽度の打撲でも3%に起こるとされている3).弾性力の強い子宮筋で吸収されたエネルギーが,より硬度の高い胎盤へも伝わっていくことにより剪断力が働き胎盤剝離を誘発する.
  • 常位胎盤早期剝離による重篤な臨床症状は受傷早期に起こることが多いが,数時間おいて顕在化することもある.
  • 症状は子宮の圧痛,子宮収縮,性器出血,母体低血圧,胎動減少,NRFS(nonreassuring fetal stat)などである.子宮収縮は単独では最も重要な常位胎盤早期剝離の予測因子であり,10分に1回以上見られた場合は20%に常位胎盤早期剝離が発症したとの報告もある4).最低2~4時間は連続CTGを行うべきである.子宮収縮,子宮の圧痛,性器出血,破水,NRFSを認める場合や,軽症以外の外傷の場合は最低24時間にわたり慎重に監視を行うべきである5)
  • 超音波検査での常位胎盤早期剝離の診断の感度は24%と低く,陰性的中率も53%と高くない6)ため,超音波検査で所見を認めない場合も否定はできない.妊婦の訴えや腹部の状態,CTGを併用して慎重に管理していく必要がある.

文献

  • 3)Brown HL. Trauma in pregnancy. Obstet Gynecol. 114: 147-160, 2009 PMID: 19546773(Review)
  • 4)Pearlman MD. A prospective controlled study of outcome after trauma during pregnancy. Am J Obstet Gynecol. 162: 1502-1510, 1990
  • 5)ACOG: Chapter 9. Medical and Obstetric Complications. In: Guideline for perinatal Care, 8thEd, 325-327, 2017 https://www.acog.org/clinical-information/physician-faqs/-/media/3a22e153b67446a6b31fb051e46918 7c.ashx)
  • 6)Glantz C. Clinical utility of sonography in the diagnosis and treatment of placental abruption. J Ultrasound Med. 21(8): 837-840, 2002