(3)ハイリスク妊娠として管理

  • コントロール不良な甲状腺機能亢進症は,流産,早産,低出生体重児,死産,重症妊娠高血圧腎症などのリスクが増加する.肺高血圧を伴ううっ血性心不全は,コントロール不良な妊婦の8%程度に認められる.
  • 甲状腺クリーゼは,コントロール不良の甲状腺中毒状態であり,感染や手術,ストレスなどを機に高熱・循環不全・ショック・意識障害などを来し,多臓器不全に至ることもある.本邦推定発症率0.21/10万人/年.
  • 甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の増悪徴候を表16に示す.

表16.甲状腺機能亢進症(バセドウ病)増悪のサインとして注意すべき徴候

  • 未治療の顕性機能低下症では,妊娠高血圧腎症,早産,胎児発育不全,時に死産の原因となり,児の神経精神発達障害のリスクも増加する.
  • したがって,投薬治療を要する甲状腺機能異常合併妊娠は,ハイリスク妊娠と認識し,慎重に管理する.
  • 一次施設では,甲状腺疾患の管理に習熟した医師や周産期管理の可能な高次施設と連携を図り,紹介も考慮する.