(2)双極性障害:Bipolar disorder

ポイント

  • 双極性障害は治療あるいは自然に一旦寛解しても容易に再発するため,精神療法と薬物療法の併用による予防(維持療法)が重要である.
  • 維持療法の中断は再発リスクが高まるので,妊娠中は薬物を継続することが原則である.
  • 特に産後4週間以内の再発率が高く,再発すると,産褥精神病発症につながり,自傷・他害(殺児念慮)を招きやすくなるため,入院を必要とすることが多い.

1)双極性障害の病態

  • 異常に高揚し開放的・易怒的となる躁病エピソードと抑うつ状態を含めた障害を起こす抑うつエピソードとが反復する状態.躁病エピソードとして,幸福・有望感,興奮,イライラ感,怒り感,突然怒りだすような敵対的な行動などがある.
  • かつて,双極性障害はうつ病と一緒に気分障害(Mood disorder)にまとめられていたが,病態が違うことから,DSM-5分類では気分障害という概念は消滅した.
  • 産後数日~数週以内に,突然幻覚・妄想・錯乱・自殺念慮などを呈する場合は,産褥精神病と称され,双極性障害の一種と考えられる.母児の安全を考慮し,緊急入院の適応となる.

2)双極性障害の診断

  • 産後うつ病が疑われた事例の20~30%が双極性障害であったという報告があり,また,抗うつ薬は躁病エピソードを誘発するので注意する(産直後からのうつ症状,躁とうつの混合症状,双極性障害の家族歴があれば特に注意する).
  • 患者の調子がよいタイミングでの「ハイ」質問票がスクリーニングツールになる(表12).

3)双極性障害の管理

  • 双極性障害が疑われた場合は,精神科に診断を依頼する.
  • 治療には,薬物療法,身体療法(修正型電気痙攣療法など),精神療法(認知行動療法,対人関係療法など)などがある.薬物療法のアドヒアランスを高めるための心理教育も重要である.
  • 治療あるいは自然に一旦寛解しても容易に再発するため,精神療法と薬物療法の併用による予防(維持療法)が重要である.
  • 維持療法の中断は再発リスクが高まるので,妊娠中は薬物を継続することが原則である.
  • 特に産後4週間以内の再発率が高く,再発すると,産褥精神病発症につながり,自傷・他害(殺児念慮)を招きやすくなるため,入院を必要とすることが多い.
  • 妊娠中の再発や重症化,産後の再発や産褥精神病の発症リスクから,十分にプレコンセプションケアされ,妊娠成立前,少なくとも6カ月前からは安定した状態で維持療法されていることが求められる.

表12.「ハイ」質問票