(2)全身性エリテマトーデス(SLE)

1)妊娠容認基準

  • 妊娠中に使用可能な薬剤でコントロールされており,一定期間(6カ月以上とする報告がある)寛解持続状態であることが望ましい.
  • ループス腎炎がある場合,活動性腎炎は妊娠高血圧腎症や早産,低出生体重児と関連するため,全身の疾患活動性と独立に評価する.「全身性エリテマトーデス(SLE),関節リウマチ(RA),若年性特発性関節炎(JIA)や炎症性腸疾患(IBD)罹患女性患者の妊娠,出産を考えた治療指針」1)では,妊娠を許容できる基準が提案されている(表17).

2)妊孕能

  • 不妊症の頻度は一般女性と有意差を認めない.
  • シクロフォスファミド投与は,年齢と投与量に応じて卵巣機能不全や早発閉経が生じる.
  • 生殖補助医療の卵巣刺激に用いるエストロゲンがSLE再燃を誘発する可能性がある.

表17.ループス腎炎を有する症例で妊娠を許容できる基準

3)妊娠中の管理

  • 妊娠高血圧腎症,早産,胎児発育不全のリスクが高く,高次医療機関での管理が推奨される
  • 25~65%で妊娠中~産褥期に病態が悪化する可能性がある.
  • 抗SS-A抗体陽性例では,約10%に新生児ループス(NEL),約2%に児の先天性房室ブロック(CHB)が発症し,抗体価が高いほど発症率も高い.
  • NELは母体からの移行抗体が消失する生後6カ月頃までに自然消退する.
  • 前児がCHBを発症した場合には,次児のCHB発症率は約16~17%まで上昇する.
  • CHBの発症は妊娠16~26週に多く,早期発見のため妊娠16~34週までは2週間ごとの超音波検査を目標とする(図9).

図9.先天性房室ブロック児の既往の有無による妊娠管理

  • CHBへの予防的なグルココルチコイド投与,ガンマグロブリン投与は推奨されない.近年ヒドロキシクロロキン投与が,前児CHBであった症例で次児CHB発症を有意に減少させた報告がある.

文献

  • 1)厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業))「関節リウマチ(RA)や炎症性腸疾患(IBD)罹患女性患者の妊娠,出産を考えた治療指針の作成」研究班:全身性エリテマトーデス(SLE),関節リウマチ(RA),若年性特発性関節炎(JIA)や炎症性腸疾患(IBD)罹患女性患者の妊娠,出産を考えた治療指針(https://ra-ibd-sle-pregnancy.org/doctor_toward/images/ishiyousshisin.pdf)