(1)小児がん患者における治療後リスク

・ がん治療の進歩によりがんサバイバーが増加しており,がんサバイバーの QOL 向上(サバイバーシップ)が今後の課題の 1 つとなっている.
・ 月経が順調に再開したとしても,治療の内容によっては卵巣予備能が低下して早期に閉経が発来する可能性があることから,サバイバーシップ向上のためには産婦人科医による小児科からの移行医療が重要である.
・ 早発卵巣不全と診断された場合,ホルモン補充療法を考慮する.女性医学的アプローチ(オンコウィメンズヘルスケア)の提供が,サバイバーシップ向上には重要である.
・ 小児がんサバイバーの妊娠において,がん治療による先天異常のリスクは増加しないと報告されているが,がん治療がその他の妊娠・分娩に影響を及ぼす可能性があるため,患者ごとにリスクを評価する必要がある.
・ アントラサイクリン系または胸部照射を受けた患者は心筋症発症のリスクがあるため,サバイバーの妊娠・分娩管理は周産期専門施設で対応するべきである.
・ 腹部・骨盤への放射線照射による流早産,低出生体重児のリスク増加が報告されている.さらに,妊娠高血圧症候群,妊娠糖尿病,妊娠貧血のリスクも高く,選択的帝王切開による分娩が多かったとの報告がある.しかし,帝王切開が選択される理由に関して詳細不明であり,帝王切開が最適な分娩方法であるエビデンスはないと結論付けている.