7.皮膚・毛髪

ポイント

  • 周閉経期に生じる皮膚症状に対する一般的対処は,日光を避ける,少なくとも1日1回,低 pH のエモリエント剤を使用,爪を短く保つ,加湿器の使用,入浴時間の短縮,石鹸を含む刺激物を避けるなどであり,皮膚症状の改善目的だけでの HRT には注意が必要である.
  • 周閉経期に生じる毛髪症状には,前頭部の生え際が保たれたまま前頭部頭皮が薄くなる女性型脱毛症(FPHL),前頭部から側頭部の生え際の帯状の瘢痕性脱毛(FFA)があり,いずれも皮膚症状と同様の一般的対処を行う.
  • 周閉経期女性における皮膚・毛髪の疾患は,HRT で対処できないことが多いことから,プライマリーケアにおいては一般的対処などの指導に留め,早期に専門医へのコンサルトを考慮すべきである.

 閉経前後の+-5歳と定義される周閉経期には,エストロゲンレベルが低下する.低エストロゲン状態は皮膚や毛髪の状態に悪影響を与えるため,病院を訪れる周閉経期女性の 64%が皮膚に関連した問題を訴えるという報告がある.周閉経期女性に多く見られる皮膚,毛髪関連の疾患リストは表 18 のとおりである.

表 18.周閉経期女性にみられる皮膚・毛髪疾患  一般皮膚疾患 掻痒症  多汗症  創傷治癒障害  乾皮症  湿疹  毛髪疾患 多毛症  女性型脱毛 (FPHL:female pattern hair loss)  前頭部から側頭部の生え際の帯状の瘢痕性脱毛  (FFA:frontal fibrosing alopecia)  性器皮膚疾患 扁平紅色苔癬  苔癬硬化症  口腔皮膚疾患 扁平紅色苔癬  熱感症  口腔乾燥症