3.高血圧

ポイント

  • 高血圧合併妊娠の妊婦には軽症域でも速やかに治療を開始し,分娩時にも早めに治療を開始する.
  • 非妊娠時から高血圧の診断を受けてアンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE-I)やアンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)の投与を受けている女性が妊娠した場合は,内科と連携して妊娠初期(妊娠14週未満)のうちにほかの降圧薬へ変更していく.
  • 高血圧合併妊娠症例で降圧薬を処方する際にはメチルドパでまず開始し,効果が乏しい場合はアムロジピンを追加する.
  • 降圧が得られない場合には二次性高血圧の可能性や早期妊娠終結が必要となる可能性を考えて高次施設へ紹介する.
  • 産後も降圧薬の授乳への影響はないことから処方の継続は可能である.

症例

 37歳初産婦.会社の健診で数年前から高血圧を指摘されていたが多忙のため放置.自然妊娠し,妊娠反応陽性のため産婦人科を受診した.身長160㎝,体重75㎏(BMI=29.3).両親に高血圧がある.

 初診時,最終月経起算にて妊娠7週,超音波下に胎児心拍を確認.血圧170/115mmHg.直ちにメチルドパ1,000㎎/日の処方を行い内科に紹介した.1週間後に産婦人科でも再検したがまだ血圧160/95mmHg.同日受診した内科ではアムロジピン5㎎/日が追加された上で血液検査が行われ,二次性高血圧は否定された.その後血圧は138/80mmHgまで下がり,家庭血圧測定も併用して妊婦健診中である.低用量アスピリンも妊娠14週から投与されている.