(5)新生児急変への備えと対応

  • 鼻腔閉塞を避けるため,顔を横に向けるなど安全な姿勢を保持する.母親にも十分に説明する.医療スタッフが母子に付き添い継続的な観察を行う,または新生児にSpO2 モニタや心電図モニタを装着し,頻回に観察する(図3)5)
  • 出生後の母子のケアにかかわるすべてのスタッフが最新の NCPR ガイドラインに従って適切な蘇生を行うことができるように,シミュレーショントレーニングを定期的に行う.
  • 蘇生に反応しない場合は,蘇生処置を継続しながら速やかに NICU へ搬送する必要がある.NICU がない施設では日頃から高次医療施設との連携を強化しておく.蘇生へ反応しても,呼吸心拍のモニタリング,人工呼吸管理を含む集中治療管理が必要となる可能性がある.施設の状況に応じて新生児搬送を考慮する.

表7.早期母子接触の適応基準・中止基準・実施方法の例  母親 児  適応基準  ・「早期母子接触」を実施する意思がある  ・バイタルサインが安定している  ・疲労困憊していない  ・医師,助産師が不適切と認めていない  ・胎児機能不全がなかった  ・新生児仮死がない(1分,5分アプガースコア≧8点)  ・正期産新生児  ・低出生体重児でない  ・医師,助産師,看護師が不適切と認めていない  中止基準  ・傾眠傾向  ・医師,助産師が不適切と判断する  ・呼吸障害(無呼吸,あえぎ呼吸を含む)がある  ・SpO2<90%未満  ・ぐったりし,活気に乏しい  ・睡眠状態  ・医師,助産師,看護師が不適切と判断する  実施方法  ・バースプラン作成時に「早期母子接触」について説明する  ・出生後できるだけ早期に開始し,30 分以上または児の吸啜まで継続する  ・継続時間は2時間以内とし,児が睡眠状態または母親が傾眠状態となった時点で終了する  ・早期母子接触を行わなかった場合は,そのほかの支援策を講じる  ・「早期母子接触」希望の意思を確認する  ・上体挙上する(30 度前後)  ・胸腹部の汗を拭う  ・裸の赤ちゃんを抱っこする  ・母子の胸と胸を合わせ,両手でしっかり児を支える  ・ドライテクニック(温乾布で全身の血液・羊水を除去 ) を行う  ・児の顔を横に向け鼻腔閉塞を起こさず,呼吸が楽にできるようにする  ・温めたバスタオルで児を覆う  ・パルスオキシメータのプローブを下肢に  装着するか,担当者が実施中付き添う  ・以下の事項を観察し,記録する  ・呼吸状態:努力呼吸,陥没呼吸,多呼吸,呻吟,無呼吸  ・冷感,チアノーゼ  ・バイタルサイン(心拍数,呼吸数)  ・実施中の母子行動  ・終了時には児のバイタルサインと状態を記録する  (日本周産期・新生児医学会,2012 1)をもとに作成)

図3.早期母子接触実施時の管理(「再発防止委員会からの提言 出生後早期の新生児管理について」5)より転載)

文献

  • 1)日本周産期・新生児医学会.「早期母子接触」実施の留意点,2012 年8月 24 日(https://www.jspnm.jp/uploads/files/guidelines/sbsv13_10.pdf)(2024 年3月 21 日アクセス)
  • 2)Moore ER, Bergman N, Anderson GC, et al. Early skin-to-skin contact for mothers and their healthy newborn infants. Cochrane Database Syst Rev. 11:CD003519, 2016
  • 3)Miyazawa T, Itabashi K, Tamura M, et al. Unsupervised breastfeeding was related to sudden unexpected postnatal collapse during early skin-to-skin contact in cerebral palsy cases. Acta Paediatr. 109: 1154-1161,2020
  • 4)Monnelly V, Becher JC. Sudden Unexpected postnatal collapse. Early Hum Dev. 126: 28-31, 2018
  • 5)日本医療機能評価機構:再発防止委員会からの提言 出生後早期の新生児管理について,2016(http://www.sanka-hp.jcqhc.or.jp/documents/prevention/theme/pdf/Saihatsu_sinseizikanri_sankairyokankeisya.pdf)(2024 年3月 21 日アクセス)