- 卵巣癌の約 10%が遺伝性である.遺伝性卵巣癌に関連する遺伝子としてはBRCA1,BRCA2 があり,BRCA 病的変異保持者の卵巣癌の累積罹患リスクは 70 歳の場合それぞれ 40%,18%とされる.
- 散発性卵巣癌(非遺伝性卵巣癌)ではp53 遺伝子の異常が最も高頻度である.
- 閉経後卵巣腫瘍においては悪性腫瘍の頻度が高いことに留意する.
- 閉経後でホルモン補充療法(HRT)を受けている女性は卵巣癌の発症リスクが高いという報告があり注意が必要である.
- 卵巣癌発症のリスクとして不妊,早期初経,晩期閉経などが挙げられる.
1 )診断
- 卵巣癌の検診方法はまだ確立しておらず,卵巣癌検診における腫瘍マーカーの有効性はない.
- 超音波検査で腫瘍径が5cm以下,直径 10cm未満でも単房性であれば悪性の可能性は極めて低いと報告されている 6).
- 超音波検査で悪性所見が否定できない,経過観察中に増大傾向がある,腫瘍マーカー(主に CA125)が上昇するなどの場合には MRI などの画像検査を施行し,手術を検討する.
悪性腫瘍のうち数%が転移性卵巣癌であり,既往歴のある卵巣腫大は慎重な評価が必要である.
- 卵巣子宮内膜症性囊胞からのがん化は囊胞サイズが 10cm以上で閉経前後以降の患者に発生しやすい.がん化する前には腫瘍サイズの増大を認め,経腟超音波検査で囊胞内容液が黒く見えることが多い 7).
- 成熟囊胞性奇形腫においては 50 歳以上や腫瘍径 10cm以上,血中 SCC や CA125 の上昇は悪性転化のリスクが高くなるため悪性転化を念頭に置いた精査を行うことが重要である 6).
2 )治療
- エコーで悪性が疑われた場合には画像所見(MRI,CT など)や腫瘍マーカー,組織型や悪性度,進行期などの暫定的な臨床診断を行い,治療方針を決定する.
- 確定診断は摘出した手術検体の病理組織診断によってなされる.
- 治療の詳細は成書に譲るが,基本は手術療法である.卵巣癌に対する腹腔鏡下手術は実施しないことが提案されている 8).