1 )病態
- 腰痛は女性の訴える症状の第2位を占める.発症からの期間が4週間以上3カ月未満は急性腰痛,3カ月以上は慢性腰痛と定義される.
- 腰痛の原因は,脊椎由来,神経由来,内臓由来,血管由来,心因性に大別される.原因の明らかな腰痛と明らかでない腰痛(非特異的腰痛)に分類されるが,多くは非特異的腰痛である.原因の明らかな腰痛には,腫瘍,感染,外傷,腰椎疾患(腰椎椎間板症,腰部脊柱管狭窄症,腰椎変形すべり症など)が含まれる.
- 腰痛発症の危険因子として,運動不足,喫煙,腰部への身体的負荷が大きい作業などが挙げられる.なお,body mass index と腰痛との間には弱い関連がみられることが報告されている 2).
2 )診断
- 注意深い問診と身体所見から表 17 に示した危険信号を示す腰痛をトリアージする 2).危険信号を示す腰痛,神経症状を示す腰痛,保存的治療によって改善しない腰痛は画像検査が推奨されるため,専門医への紹介を考慮する.

3 )対応・治療
- 図 19 に示したように腰痛の治療には,薬物療法以外に活動性維持,運動療法,認知行動療法,物理・装具療法がある.なお,安静が必ずしも有効な治療法といえないこともある.
- 薬物療法の第一選択は,急性・慢性腰痛ともに,NSAIDs およびアセトアミノフェンである.第二選択として,急性腰痛には筋弛緩薬,慢性腰痛には抗不安薬,抗うつ薬,筋弛緩薬,オピオイドが推奨されている.
- 運動療法は,慢性腰痛に対して有効である高いエビデンスが示されている.
- 亜急性または慢性腰痛には認知行動療法も有効である.
- 器質的疾患が否定され,更年期障害の一症状と考えられる腰痛に対して HRT は有効である 3).しかし,腰椎椎体骨折による変形,脊椎症,脊柱管狭窄症,ヘルニアなどは HRT では改善が期待できない.日常生活動作の低下を来している場合には,整形外科などでの専門的治療を考慮する.器質的疾患が否定される腰痛症に対しては HRT を考慮してよいと考えられるが,その作用機序や有効性を示す十分な報告がないことを認識しておく必要がある.
