(2)炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎とクローン病)

ポイント

  • 活動期の妊娠は低出生体重児や早産のリスクが高くなるため,寛解期での妊娠が望ましい.
  • 妊娠中に悪化することがあるため,集学的管理が可能な施設での管理が望ましい.
  • 内服薬の適切な使用が必要である(自己中断は疾患増悪となるため注意する).
  • 妊娠に対する情報を事前に提供する.

1)診断の手順

  • 腹痛,下痢,血便などの症状が持続する場合には,専門医に紹介する.
  • 10代後半から30代前半が好発年齢で,再燃・寛解を繰り返す
  • 経口避妊薬は発症との関連が知られている.
  • 内視鏡,注腸X線検査,生検組織学的検査などで診断される.

2)プレコンセプションケア,妊娠・妊娠の継続の可否

  • 活動期や手術既往のある場合に妊娠しにくいことがある.
  • 活動期には,低出生体重児,早産などを併発しやすい.
  • 寛解期では,特別な周産期管理を要さないことも多い.
  • 寛解期での妊娠が望ましい.
  • 就職などのタイミングで,上記の情報を提供するとよい.
  • メトトレキサートは妊娠中の投与を避ける.

3)実際の管理

  • 妊娠中に悪化することがあり,集学的管理が可能な施設での分娩管理を行う.
  • 手術既往や肛門病変の有無などの情報を基に,本人含め多職種で話し合い分娩様式を決める.

4)内服薬の胎児への影響,授乳への影響

  • 基本的には治療優先であり,自己判断で中止して増悪させないようにする.
  • 5-ASA(5-アミノサリチル酸)製剤,プレドニゾロン(高用量は除く)は妊娠,授乳期に比較的安全に使用できるとされる.
  • サラゾスルファピリジン内服例では葉酸の補充を勧める.
  • 栄養療法中は,特に妊娠初期においては,ビタミンA過剰摂取に注意する.

5)治療薬の変遷(新しい知見を踏まえた管理)

  • 妊娠22週以降の抗TNFα抗体製剤使用例では,出生児のBCGなどの生ワクチン接種時期の延期について主治医と相談する.
  • アザチオプリンは妊娠中も投与可能であるが,男女ともに遺伝毒性の可能性があるため,可能であれば回避した方がよい.