1 )病態
- 女性型脱毛症(FPHL:female pattern hair loss)(図 25)は,前頭部の生え際が保たれたまま,前頭部頭皮が薄くなるのが特徴である.FPHL は,周閉経期において頭頂部の比較的広い範囲の頭髪が薄くなることから男性型脱毛症と区別される.FPHL におけるアンドロゲン依存性は不確かで(『男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン(2017 年版)』),エストロゲンとアンドロゲンの役割は明らかではなく,多くの患者は正常アンドロゲンレベルを保っていることから,エストロゲンレベルの減少が関与していると考えられている.
- FFA(Frontal fibrosing alopecia)は,閉経期以降の中高年女性に好発する,前頭部から側頭部毛髪生え際の帯状の瘢痕性脱毛であり,前頭部から側頭部にかけ,毛が抜けやすい症状が特徴である.円形脱毛症と誤診されやすい.

2 )診断
- FPHL の鑑別診断には,慢性毛孔性脱毛症およびびまん性円形脱毛症が含まれる.
- 多毛症,重症の尋常性ざ瘡,月経不順などのアンドロゲン過剰の徴候がある場合には,遊離テストステロン値やプロラクチン値の測定を行う.
- FFA では,早期には毛包周囲や毛包内のリンパ球浸潤,毛包の液状変性が見られ,晩期には,毛包の線維化が起こる.初期でまだ瘢痕化していないと,副腎皮質ホルモン局所注射などにより発毛がみられることがある.
3 )治療
- 一般的対処は皮膚と同様である.
- FPHLおよびFFAの治療は,いずれも保険診療ではない,または本邦で未認可である.