(2)月経周期と便通
「お腹の調子が悪くて,内科で診てもらったら,『異常がないから婦人科に行って』と言われた」.産婦人科の受診理由として,しばしば聞かれる訴えである.しかし,産婦人科医が内診や超音波検査で,明らかな器質疾患の有無のみを調べ,異常が無ければ診断を終了しているとしたら,患者に寄り添う診療が十分に行われているとはいえない.月経周期をもつ女性の場合には,排卵が起こり黄体期に入ると黄体ホルモンの上昇とともに,腸管内から水分の体内貯留作用が働くため,便は硬くなり,蠕動運動が抑制され,腹部膨満感や便秘の原因になる 4).その後,月経期には黄体ホルモンが減少し,プロスタグランディンの作用で蠕動運動が亢進するため,便はやわらかくなる.つまり,正常な卵巣機能をもつ女性は,月経周期によって変化する機能性の便通異常が起こる(図 20).