(2)早発卵巣不全(POI)

1 )定義

 40 歳未満で閉経状態となる疾患であり,卵胞が早期に消失する早発閉経とゴナドトロピン抵抗性卵巣が含まれる.

2 )頻度

 自然発症の POI は 40 歳未満で1%,30 歳までで 0.1%程度の発症率である 3)

3 )分類

 病因不明の特発性が最も多く,ターナー症候群を含む遺伝性,自己免疫性,化学療法・放射線療法後の医原性などが挙げられる.原発性では卵巣内卵胞が早期に減少するため卵巣性無月経を生じる.

4 )診断

 ① 40 歳未満で続発性無月経が半年持続,②ゴナドトロピン高値(FSH > 25mIU/mL),③エストロゲン低値(E₂ <5~10pg/mL),により診断が行われる 2)

5 )症状と対応

 比較的早期に現れるのは更年期症状や記銘力低下,うつ症状などであり,長期的には冠動脈疾患,骨粗鬆症,Ⅰ型糖尿病,悪性貧血,SLE,関節リウマチなどの発生率が上昇し,死亡リスクも上昇するといわれている.これらの健康リスクを軽減すべくホルモン補充療法(HRT)が長期にわたって行われるが,ゴナドトロピンの低下により低頻度ながら排卵を起こすことがあるため注意が必要である.OC/LEP も治療選択肢として考えられるが,骨量維持作用に関する成績が不確定なため HRT が推奨される.

  • OC/LEP から HRT への切り替えのタイミングは?
     WHO 適格基準では,OC/LEP は閉経まで使用できることが基本となっているが,50 歳以降は投与しない.40 歳以上の未閉経者では慎重投与とし,有益性と危険性について十分に検討する.45 歳から閉経の可能性を考慮し,50 歳までに HRT へ切り替えることが『OC/LEP ガイドライン』では推奨されている.

文献

  • 1)Munro MG, et. al. FIGO Menstrual Disorders Committee. The two FIGO systems for normal and abnormal uterine bleeding symptoms and classification of causes of abnormal uterine bleeding in the reproductive years: 2018 revisions. Int J Gynaecol Obstet. 143: 393-408, 2018
  • 2)小川真里子,他.性器出血.産科と婦人科.83:428-432, 2016
  • 3)女性医学ガイドブック 更年期医療編(2019 年版).金原出版