(2)子宮内膜症

1 )診断

①内診

 可動性,内診時の疼痛の有無やダグラス窩周囲の硬結を確認する.

②超音波断層法

 卵巣囊胞はびまん性で均一な内部エコーをもつ囊胞として描出される.

③腫瘍マーカー

 CA125 は特異的ではない.月経時に上昇する.卵巣癌との鑑別には TFPI2(組織因子経路インヒビター2)が有用.

④ MRI

 卵巣囊胞は T1 強調画像で高信号,T2 強調画像で低信号を示す.両側卵巣が互いに接する(kissing ovaries),腸管が子宮あるいは卵巣に向かって嘴状にひきつれて見える,などは癒着を示唆する.

2 )治療,管理

 腹膜病変,卵巣チョコレート囊胞,深部病変などがあり,症状は進行性で再発・再燃率は高く,悪性化のリスクがある.また本症の既往を有する女性は閉経後に心血管系イベント発生のリスクが高い.長期にわたる総合的な管理が必要である.

 年齢,症状,既往治療と副作用などから患者の優先度を考慮し,薬物療法,手術療法,無治療経過観察から個々の患者に最適な方針を選択する.

①薬物療法

  • LEP:年齢上昇とともに血栓症のリスクが高まる.高年齢者の使用には注意を要する.
  • ジエノゲスト:不正性器出血が多い.骨量低下が起こることがあり長期使用時には
    注意が必要.
  • GnRH アナログ:LEP やジエノゲストでもコントロール不良な子宮筋腫合併例や
    大きな子宮腺筋症合併例に用いる.

②手術療法

 根治的治療として,付属器切除,場合によっては子宮摘出も行う.

③以下の場合には高次医療機関へのコンサルトを考慮する.

  • 症状が強い,薬物療法でもコントロール不能,かつ閉経まで時間がかかると見込ま
    れる時
  • 悪性が否定できない時
  • 閉経時にも残る(と予想される)大きな(長径5cm以上)卵巣囊胞

④コツ・TIPS

  • ホルモン療法で悪性化を予防できるというエビデンスはない.
  • (卵巣摘出でなく)卵巣囊胞摘出が卵巣癌の発生を低下させるというエビデンスはない.
  • 薬物療法を行いながら閉経時期を予測するのは困難である.