(2)子宮体癌

  • 子宮体癌の好発年齢は 50~60 代で以前と変わりないが罹患数は全年齢で増加している.
  • 子宮体癌であった症例の 90%以上に出血などの症状があり,出血を目標にしての検診はある程度の効率を維持できると考えられる.
  • 子宮体癌は臨床病理学的,分子病理学的観点から,I型とII型の2つに分類され,I型が約8割を占める.予後不良なII型は比較的高齢者に発症する.

1 )子宮内膜細胞診

  • 子宮内膜細胞診は吸引法または擦過法により子宮内膜の細胞を採取し,採取された細胞をスライドグラス上に均等に擦りつけて塗抹し固定する.吸引式では採取細胞診が擦過式より少ない傾向があり,特に出血時には採取量が少なくなる.
  • 近年では液状細胞診も導入されつつある.日本における子宮内膜細胞診の正診率は他国より高く 90%前後とされる 3).
  • わが国における子宮がん検診では子宮頸癌の検査において最近6カ月以内に表5の症状が認められた場合には医師の判断で子宮体癌検査を行うことができる.第一選択としては十分な安全管理の下で多様な検査を実施できる医療機関への受診を勧奨する.ただし,引き続き子宮体部の細胞診(子宮内膜細胞診)を実施することについて本人が同意する場合には,子宮頸がん検診と併せて引き続き子宮体部の細胞診を実施することができる 4).

    表5.子宮がん検診の際に内膜細胞診を考慮すべき症状  (ア)不正性器出血(一過性の少量出血,閉経後出血など)  (イ)月経異常(過多月経,不規則月経など)  (ウ)褐色帯下

  • ガイドラインでは子宮内膜細胞診の検査対象者を表6のようなリスク因子のある女性としている 1).

    表6.子宮体癌の高リスク因子  (1)ホルモン的因子  早発月経  遅発閉経  未妊・未産  多囊胞性卵巣症候群  エストロゲン過剰状態(エストロゲン補充療法や乳がん術後のタモキシフェン内服)  (2)生活習慣因子  肥満  高血圧  糖尿病  (3)遺伝的因子  リンチ症候群

  • 経腟超音波で子宮内膜の肥厚,特に閉経後で子宮内膜が4~5mm以上の症例には細胞診と組織診が必要である.
  • 他科の悪性腫瘍や悪性腫瘍の家族歴(乳癌,卵巣癌,大腸癌,子宮体癌)などには注意をはらう.

2 )子宮内膜組織診

  • 擦過式の場合は子宮の前屈後屈に合わせてキュレット鉗子の曲げ方を調節して4方向以上でゆっくり掻爬し,内膜組織診を行う.掻爬による内膜組織診は内膜病変の確定診断に有用であるが,患者の疼痛を伴う.近年は吸引組織診の採取器具が複数発売され,検査時疼痛の緩和に有用で普及しつつある.
  • 子宮口狭窄や疼痛のため検査が困難な場合には,静脈麻酔や全身麻酔下での子宮内膜全面掻爬組織診もしくは子宮鏡を併用した組織診を行うことができる高次施設へ紹介する.
  • 子宮内膜組織診後には(時には内膜細胞診施行後でも)1%程度の確率で子宮内膜炎,子宮留膿腫,付属器炎,卵管留膿腫などの感染症を来すことがある.特に子宮筋腫や子宮腺筋症のため内腔が拡張して子宮腔内に液体が貯留しやすい場合は要注意である.

3 )治療

  • 子宮体癌の治療はガイドラインにより臨床進行期別に推奨されている 5)
  • 子宮体癌は腺癌が大部分であり放射線感受性が低いと考えられており,進行がんであっても切除可能な子宮体癌の標準治療は外科手術である.
  • 高齢や合併症などで手術適応にならない患者に対しては根治的放射線治療を提案する.

4 )TIPS:閉経後で子宮口狭窄のために器具の挿入が困難な場合の対応は?

 高齢者では子宮口が狭くなるために採取器具が挿入困難なことがある.その際は子宮腟部を鉗子で固定し,ゾンデにより挿入路を確認することで可能になることがある.ただし,鉗子で過度に頸部を牽引すると迷走神経反射を来すことがあり,注意が必要である.