(1)肩こり

1 )病態

  • 肩こりは,「頸より肩甲部にかけての筋緊張感(こり感),重圧感,および鈍痛などを総称」や「後頭部から肩,肩甲部にかけての筋内の緊張を中心とする不快感,違和感,鈍痛などの症状,愁訴」と定義されている.女性の訴える症状の第1位であり,有訴者数は年々増加傾向にある.しかし,科学的な研究は乏しく,病態は不明なことが多い.
  • 原因には,長時間の作業といった持続的筋収縮やストレスなどの心理的要因があり,動作時の筋肉への酸素供給能が低下していることが報告されている 1)

2 )診断

  • 患者の自覚症状によるところが大きい.頸部から肩甲部にかけて触診を行い,上肢に痛みや痺れがある場合には精査が必要である.また,肩以外に体幹や下肢に痛みがある場合には身体全体の圧痛点を調べ,多数みられる場合には線維筋痛症などのほかの疾患の存在を念頭におく.
  • 肩こりは,図 18 のように原発性肩こりと症候性肩こりに分けられ,様々な疾患を鑑別する必要がある.必要に応じて専門医に紹介する.

3 )対応・治療(図 18)

  • 基本的な対応として,同一姿勢を長くとらないように,仕事などの途中で休憩をとって時々頸椎や肩関節を動かすことや,散歩など軽い全身運動によるストレスの発散を指導する.また,肩関節周囲の筋肉を冷やさないようにし,全身運動によって血流を増加させるといった保温も指導する.
  • 肩こり以外にほてりやのぼせなどの更年期症状がある場合,ホルモン補充療法(HRT)を考慮する.HRT が有効であった場合には更年期障害に伴う肩こりである可能性が高い.
  • ・薬物治療として筋弛緩薬であるエペリゾン(ミオナール®)やチザニジン(テルネリン®)を用いる.痛みを伴う場合には非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を用いる.うつ状態を合併している場合には抗うつ薬を併用する.

図 18.肩こりの原因と治療