1 )病態
- 皮膚の老化は,環境的要因(紫外線,喫煙,汚染)と,ホルモン分泌低下が組み合わさって生じる.
- エストロゲン分泌は皮膚に強さと弾力性を与えるコラーゲンとエラスチン発現に関係があり,加齢に伴うコラーゲン線維と弾性線維の変性も相俟って,閉経後には,皮膚のしわとゆるみが増加する.
- 加齢皮膚では,表皮は薄くなり再上皮化が遅れる.真皮も加齢皮膚では菲薄化し,結合組織の量と組織が減少するため弾力性と張力が失われる.
2 )診断
- hot flush も皮膚症状に含まれ,HRT が有効である.
- 乾皮症を伴う皮膚掻痒症は,HRT に加えて 3 )に記載する一般的対処も有益であると報告されている.
- アレルギー性接触皮膚炎や粘着性湿疹を含む湿疹性発疹は,更年期および閉経期の女性に最も多い皮膚疾患であったと報告されている.
- 更年期角皮症は,更年期障害に伴う掌蹠角皮症であり,足部により重篤に現れる.
- 多汗症は,かなり幅があるが,周閉経期女性の 30~80%に生じる無視できない疾患である.
3 )対応
- 一般的対処:日光を避ける,少なくとも1日1回,低 pH のエモリエント剤を使用,爪を短く保つ,加湿器の使用,入浴時間の短縮,石鹸を含む刺激物を避ける.
- 更年期角皮症:尿素クリームを使用.
- ホルモン補充療法:皮膚症状だけの改善目的でホルモン補充療法を使用するのはナンセンスであり,注意が必要である.ただし,皮膚科領域においては,エストロゲン外用療法は,結合組織の量と組織を改善し,表皮の厚さを増加させることにより,老化した皮膚の皮膚機能を改善する可能性がある,と考えられている.