(1)新生児蘇生法(NCPR)について

  • NCPR は仮死児が出生した時に最も重要な手技であり,成功すれば新生児死亡や重症脳性麻痺を回避することができる.再発防止委員会ではこれまで『再発防止に関する報告書』の第1回,5回,12 回の3回にわたって NCPR を取り上げている.NCPR の詳細は他項に譲るが,仮死児が出生した場合は可及的速やかに胸骨圧迫と人工呼吸を開始することが重要である.原因分析委員会にかけられた症例のうち,生後1分以内に人工呼吸が開始された児の割合を分析した結果を図4に示す.

    図4.生後1分以内に NCPR が必要であった事例における生後1分以内の人工呼吸開始の有無「第 14 回産科医療補償制度再発防止に関する報告書」1)より抜粋改変

  • 原因分析委員会が解析を始めた 2009 年以降,生後1分以内に NCPR が必要であった事例は年間 200 例程度で変わりない.一方,生後1分以内に人工呼吸を受けた児の割合は,NCPR アルゴリズムが示された 2011 年以降増加し 80%に達している.
  • 提言として以下のようにまとめられた.
    1. NCPR アルゴリズムの手順を認識する
    2. 人工呼吸(バッグ・マスク換気)と胸骨圧迫をアルゴリズムに沿って実施する
    3. 定期的に知識や技能の更新を図る
  • 再発防止委員会では NCPR の重要性を重視している.しかしこれらの結果は脳性麻痺になった事例のみの検討である.NCPR により後遺症なく成育した児や NCPRの有無にかかわらず死亡した児については検討されておらず,NCPR がどれほど予後に寄与するかについては論じていない.