- 子宮頸癌の罹患率は 30 代後半から 40 代がピークでその後は年齢とともに漸減するが,70 代後半からやや増加傾向となっており,留意する必要がある.
1 )診断
1子宮頸部細胞診
- 子宮頸部細胞診を行う際は子宮頸部の扁平円柱上皮境界(SCJ:Squamocolumnar junction)を中心に行うが,閉経女性では SCJ が頸管内に入りこんでいることがしばしばあり,採取器具の特性を考え症例ごとに採取法を工夫する必要がある.
- 採取器具としてはヘラやブラシは細胞採取量が多く,頸管細胞の採取にも適している.
- 標本作成方法はスライドグラスに塗布する従来法と,液状処理細胞標本(LBC 法:Liquid-based cytology)がある.
- LBC 法は細胞をすべて保存液中に回収するため細胞分散が均一な標本を作製することができ,残液を利用した HPV 検査が可能という利点がある.
- 細胞診単独検診では感度の低さに留意する必要があり,特に腺癌は扁平上皮癌よりも細胞診で偽陰性となりやすいため,細胞診陰性でも出血が続く,帯下の増加などの症状があれば積極的に検査を繰り返す必要がある.
- 高齢者では出現する細胞として傍基底細胞が主体となり,異型細胞との判別に苦慮することがある.この場合にはエストロゲン剤を投与して萎縮性腟炎を治療後に再検査を行うとよい.
2コルポスコピー・組織診
- 細胞診が ASC-US の場合には追加で HPV 検査を行う.HPV 検査が不可能な施設では6カ月後,1年後に細胞診の再検を行い,ASC-US 以上の場合にはコルポスコピーや生検のできる医療施設において精密検査を行う.もしくは再検せずにただちにコルポスコピー・生検を行うことも許容される.
- 細胞診が LSIL,ASC-H,HSIL,SCC,AGC,AIS,adenocarcinoma,other malignant neoplasia の場合にはただちにコルポスコピー・生検を行う 1).
- 高齢者では SCJ が頸管内に局在しておりコルポスコピー不適例も多い,この場合頸管内掻爬組織診を行う.細胞診異常で生検にて病変が見つからない場合には診断のために円錐切除術を行う.それでも診断がつかない場合には子宮全摘出を考慮する.
- 細胞診で癌が疑われ,コルポスコピー下組織診や頸管内掻爬組織診でも癌組織が採取されない場合には頸管奥に腫瘍が存在していることがあり MRI が有効なことがある.
2 )治療
- 新進行期分類(日産婦 2020,FIGO2018)によってIB 期に腫瘍径2cmの基準ラインが設定されIB 期はIB1 からIB3 期までに細分類され,骨盤あるいは大動脈リンパ節転移症例はIIIC 期に分類された.
- 子宮頸癌の治療は『子宮頸癌治療ガイドライン』によって進行期別に治療法が推奨されており,大きく手術療法と放射線療法に分けられる 2)(図6).
