(1)中高年女性の月経異常・不正性器出血

 不正性器出血は,外来受診の主訴としては多く,年代によって対応が異なるが,中高年期の場合には悪性疾患の鑑別は重要であり,同時に更年期にむかう卵巣機能の低下に伴う生理的な不正出血にも考慮が必要である.

1 )概要

 全年齢を通した異常子宮出血(AUB)の鑑別に関しては FIGO が提唱した PALMCOEIN 分類が有用であり 1),PALM は画像的に認識できる器質性疾患の頭文字(内膜ポリープ,子宮腺筋症,子宮筋腫,悪性腫瘍や内膜増殖症),COEIN は非器質性疾患の頭文字(凝固異常,排卵障害,内膜機能異常,医原性,その他)を指している.

2 )鑑別診断

 妊娠の除外の後に,器質性疾患のスクリーニングとして頸部や内膜の細胞診,内診,超音波断層法を施行し,異常がなければ排卵障害(卵巣機能低下)を念頭に非器質性疾患の鑑別を行う.必要なら末梢血液検査と生化学検査も実施する.

3 )診察のポイント

 月経歴,時期,量,持続日数など出血の状態,既往歴や薬の服用歴,家族歴などの問診を行う.次に内診,腟鏡診などから出血部位を確認し,萎縮性腟炎を鑑別する.さらに肛門や尿道などに異常がないことを視診・直腸診で確かめる.

 経腟超音波断層法は非侵襲的かつ多くの情報が得られるため推奨され,閉経後内膜厚は4~5㎜以下が標準値と考えられており 2),器質性疾患はほぼ除外できる.内膜細胞診の実施にあたっては,可能な限り痛みを与えない工夫が必要である.性交歴のない女性の場合には経直腸超音波断層法による観察を検討する.

4 )対応

 器質性として悪性疾患が疑われれば,高次医療機関へ紹介する.筋腫,腺筋症には手術適応か,場合により逃げこみ治療が可能かを判断,GnRH アゴニスト・アンタゴニスト治療ないしはジエノゲスト療法を検討する.非器質性疾患として,抗凝固療法,ピル使用の有無などは問診として必須であり,血液疾患がみつかる場合もあるため慎重な対応が望まれる.