編集後記
本研修ノートでは,産婦人科のジェネラリストとして体得しなければならない要点が盛り込まれています.中高年女性の診療では,女性医学,婦人科腫瘍,生殖内分泌,周産期と4分野の横断的知識が求められます.生命を脅かす疾患が増加する一方,器質的原因を持たない更年期障害を伴いやすかったり,逆に,更年期症状と思い来院した患者が,器質的疾患が原因であったりと様々で,診断が難しい年齢層でもあります.
個人的な印象として,診療が難しくなる原因が2つあると考えます.1つ目は,ネットの情報の氾濫です.近年ではネットの発達に伴い,受診前に特定の疾患を強く疑って来院したり,それに伴い,過度な期待を抱いたりして来院するケースが散見されるようになりました.もちろん,医療系啓発広告を含め,徴候と診断がピタリと一致していれば患者も満足で,その情報自体が有益なのですが,診断がつかなかったり,特定の治療法が選択できなかったり,他疾患が発見されて受け入れがスムーズではない場面も多々あります.2つ目は本ノートの7ページの総論2.(3)に記載されているように,自施設 ( あるいは自科 ) で対応できる領域を認識しておくことが極めて重要で,高次施設に転院したことで,行き場を失った状態になった患者をこれまで目にしてきました.大学病院のような急性期施設では,処方可能なホルモン製剤が限定されるなどの制約があり,患者にベストな治療ができるとは限りません.施設内あるいは地域の医療資源を熟知しておくことが患者の利益につながると考えます.これは1つ目の問題解決の糸口でもあり,患者の望む治療などを把握しておくことで,信頼関係の構築に役立つはずです.
最後になりますが,本書の執筆に貴重な時間を割いていただいた著者の先生方,編集・校正に尽力していただいた研修委員会の先生方に深謝申し上げます.
(幹事 森本恵爾 記)